第24回 なかなか登場しないネットワーク管理者:テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(1/2 ページ)
レアキャラと言われるプリセールスですが、ITインフラ構築の現場にはもっとレアなキャラがいることがあります。さて、自社インフラの全体を見渡しているのは、誰……でしょう。
新社屋の建設や数千〜数万人規模の全社シンクライアント移行など、ある程度大きなプロジェクトになると、本来“レアキャラ”なプリセールスも、お客様との週次ミーティングに参画することがあります。
自分がコンサルタントなのかプリセールスなのか分からない状況ですが、お客様とのつき合いは深まりますし、IT部門の組織構造もおのずと見えてきます。
なかなか登場しないネットワーク管理者
あるインフラ更改プロジェクトがありました。震災を機に、トップダウンでディザスタリカバリ(以下、BCP/DR)の仕組みも取り入れたいという依頼でした。
インフラでBCP/DR(BCP・事業継続計画/DR・災害復旧)を実装するとなると、普段利用している場所(メインサイト)から遠く離れた場所(バックアップサイト)にデータを常時転送するのが一般的です。メインサイトが被災して稼働できなくなっても複製データがあるため、バックアップサイトのサーバ機器で再稼働できるという仕組みです。
日本の場合でしたら実際の構築作業はひとまずSIベンダーに任せるとして、それ以外のお客様サイド(自社)はどのようなメンバーが登場するでしょう。
データ保護の話ですので、真っ先に登場するのはストレージ担当者ですね。次はおそらくサーバ担当者です。しかしながら、ネットワーク担当者はなかなか現れません。「ネットワーク系の人も呼んでください」と伝えると、「彼はネットワークも詳しいから」とネットワークスペシャリストやベンダー資格も持っているサーバーエンジニアさんがやってくることが多々あります。
「あ、はい。あれ!?」
こういった検討プロジェクトの場で求められているのは、スキルではありません。もちろん博識だとこちらもいくらかラクできることはありますが、知識についてはベンダーの人間で補完できます。もっと単純に、「自社のネットワーク環境を把握している“ネットワーク管理者”」を呼んでほしいのです。
確かに、BCP/DRはサーバ・ストレージ系の話で、ネットワークは直接関係ないように見えます。しかし仮想化といった昨今のテクノロジーが絡むと、ネットワークがどう構成されているか重要になってきます。ここでの詳細は割愛しますが、例えばL2延伸やクライアントDNSキャッシュなどですね。
「ごめん、ちょっと部署が遠いんだよね」
「WANは既存の回線でいいから」
「ネットワークは今回の調達の範囲外だし」
なぜか……避けられ、そもそも声を掛けづらそうなのです。
そう言われると無理強いはできないのですが、プロジェクトがある程度進み、組織図を拝見できるようになるとその理由がぼんやりと見えてきました。
なるほど、ネットワークは部署そのものが離れているんですね――。
それはどんな組織になっているのでしょう。
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