第30回 日本参入で、もはや「スタートアップ」じゃない:テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(1/2 ページ)
前回、スタートアップとベンチャー企業の“意外と大きな意味の違い”をひもときました。では、「採算度外視」の考え方もある欧米中心のスタートアップは、日本市場でもそんなにイケイケなのでしょうか。そこには……。
日本のベンチャー企業以上に強い信念をもつスタートアップ企業。
いまはもうからなくても、ストックオプションや買収でペイできればいいやといった意気込みで、画期的なアイデアを武器に、業界に新しい風を吹かせます。
第三者としてはワクワクしますが、自社で採用、購入しようとなると話は別です。他人には「リスクを楽しめる」なんて冗談交じりに言っていても、いざ当事者になると「心配で神経が擦り切れる」なんてことも耳にします。
日本に参入してくるスタートアップ企業は猛者ぞろい?
実際のところどうなのでしょう。そんなに“リスク”があるのでしょうか?
実はそうではないかもしれません。なぜならば、日本に進出できている時点で、数多ある欧米のスタートアップ企業の中では“かなり成功している方”になるためです。
前にも紹介したとおり、IT製品が日本で受け入れられるには日本語の壁があります。日本語入出力対応、日本語インタフェース、日本語マニュアル――。絶対に必要ではありませんが、対応しているに越したことはなく、何だかんだで重要ですので幾分からの開発投資がかかります。
では、その投資を判断する経営側の視点に立ってみましょう。日本のIT市場はマーケットとしては大きいのですが、鎖国とは言わないまでも閉鎖的です。古くは通産省から支援され、日本語対応も完ぺきな強力なライバル(国産機メーカー)もいます。参入には、かなり難易度の高い部類に入ることでしょう。リターンは確かに大きいかもしれませんが、周りを見渡せば英語のままで何ら問題のない国はいくらでもあります。
RPGにおいて、中盤からのキーアイテムである“船”を得たからといって、自分の身の丈(レベル)以上のエリアにぬけぬけと上陸したらどうでしょう。全滅コースですよね。日本市場へ進出するということは、難易度の低いエリアはたいてい攻略済みのレベルになっているということです。言い換えれば、スタートアップと言えども日本へ進出するということは、数々の国で成功を経験した“優良企業”であるといえます(もっとも、何も考えずに、あるいは果敢に日本上陸して全滅、撤退していく企業も少なからずありますが……)。
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