「多様性がないと生き残れない時代」 LGBT当事者が語るマネジメント論――川田篤さん:「プロジェクトマネジャー」の極意(3)(4/4 ページ)
プロジェクトメンバーは多様性に富むのが一般的。異なる個性のメンバーを同じ目標に向かわせて成果を出すには――。そんなときに有効なのが「ダイバーシティ」という考え方だ。LGBT周知の旗手として、企業を越えて活動する“プロ”にその極意を聞いた。
“閉鎖社会”に性的マイノリティの立場から立ち向かう
ソフトウェアビジネスのマネジャーとして、LGBTコミュニティーの旗振り役としてパワフルな日々を過ごす川田さんだが、その根底にあるのは徹底した現場主義だ。
「常に現場にいい影響を与えることを目指して動いてきました。半年や1年ぐらいのスパンで価値ある大きな変革を全力で進めていく。そのスタンスはこれからも変わらないと思います」(川田さん)
川田さんが今抱えている問題意識は、世の中が閉鎖的になっているのではないかという危機感だ。ITの発達で情報化社会が進む一方で、好きな情報にだけアクセスできるようになり、自分が“理解している世界”以外の人や考え方に対する受容性が狭まっているのではないかと危惧する。
「ヘイトスピーチまで行かなくとも、特にネット上では、ある発言に対して、ネガティブな方向で過敏に反応する状況があります。いろいろな人が交わり、さまざまな価値観を共有することで社会や世界は成り立っているわけで、それを頭ごなしに否定し合えば、暴力や武力的な衝突へと発展しかねません」(川田さん)
こうした問題を解決するきっかけに成り得るのが、川田さんの“ダイバーシティ”に対する考えだ。性的マイノリティーだけではなく、女性や障害者、人種や思想といった多様性を受け入れ、生かしていくこと。これはマネジメントの面でも大事なアプローチだという。
「ダイバーシティは、間違いなく新たな価値の創造につながります。これまでは官主導と言いますか、上が決めることで世界が作られてきましたが、今の時代は“全員”が活躍する、逆に、多様性がないと生き残れない世界だと思っています。これはマネジメントに関しても同じ。そういう意味でも、LGBTに対する理解をきっかけに、他人や他の考え方を理解し、受け入れられる――そんな受容性の高い社会に向けて、自分ができることを着実に進めていきたいです」(川田さん)
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