“あこがれの名機”で振り返る、東芝ノートPC 30年の歴史:Librettoにときめいたあの日(3/3 ページ)
ノートPC事業30周年の節目の年から1年、「PC事業の譲渡」という大きな決断を下した東芝。“世界初のラップトップ”をうたうノートPCを皮切りに、数々の名機を生み出した同社の“PC開発の歩み”を振り返る。
1998年に登場した「DynaBook SS3000」は、筐体にマグネシウム合金を採用して、従来製品に比べてより薄型軽量化を図った点に注目が集まった。当時、この「薄型軽量ノートPC」のカテゴリーが非常に盛り上がっており、各社から製品が投入されていたが、その火付け役になったのは東芝ではなく、ソニーだった。
ソニーはマグネシウム合金を採用したサブノートPCの「VAIO PCG-505」を発表し、ライバル各社を驚かせた。HDD容量が足りないなどスペック面で物足りないところもあったが、斬新なデザインとコンセプトは市場に大きなインパクトをもたらした。前述の「DynaBook SS3000」は、これに対抗する製品として“ノートPC”の東芝からリリースされたもの。筆者にとっても雑誌での仕事をスタートして初めてレビュー記事を書いた製品として非常に印象に残っている。
ノートPCの“象徴的存在”であることが仇に
振り返ると、東芝のノートPC事業の黄金期は、初代DynaBookから始まり、新機軸の製品を次々と投入していた2000年代くらいまでなのだと思う。実際、その頃はPC市場における世界シェアも高く、トップ5メーカーの常連だった。世界中どこを旅しても東芝のノートPCを見かけるなど、日本の顔の1つだったといえる。
ただ、目立ちすぎることは必ずしもプラスにはならず、東芝は1990年代後半に米国でFDC(フロッピーディスクコントローラ)の不具合に起因する東芝製ノートPCオーナーらによる集団訴訟を受け、1999年に和解金として1100億円の支払いに応じている。当時の利益の多くを吐き出す結果になったともいわれ、象徴的存在として狙われた感は否めない。
つねに最前線に立ち、ときにライバルに先行されながらも、すぐにキャッチアップする対抗製品をリリースしたりと、ノートPC市場の開拓者として走り続けてきたのが東芝のPC事業だった。その東芝が30周年の節目を迎えた2016年、PC事業の事実上の切り離しを行って次のステップを目指そうとしている。
ちょうど30周年にあたる2015年、独ベルリンで開催されたIFA 2015では、同社のPC事業30周年を祝う記念コーナーが設けられ、過去の名機が展示されていた。
その中央には「Toshiba "Dynabook"」と名付けられたプロトタイプが鎮座しており、アラン・ケイ(Alan Kay)が1960年代に提唱した「子供向け教育コンピュータ」としての「ダイナブック(Dynabook)」のコンセプトを追求したマシンとして説明が添えられていた。
「ダイナブック(DynaBook)」という名称はアラン・ケイが提唱したもので、ポインティングデバイスを持たない東芝のノートPCにその名をつけるのはどうかという議論があったといわれている。30年の月日を経て、既に当初のコンセプトを体現するのに十分なハードウェアやソフトウェア技術が蓄積されたであろうことを思えば、東芝は今が「ダイナブック(Dynabook)」の次を見据えるタイミングなのかもしれない。
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