コレ1枚で分かる「クラウドの新しい常識」(2):即席!3分で分かるITトレンド
クラウドでシステム資源を調達する際は、その費用対効果の高さを最大化したいところ。そのために押さえておきたいポイントについて解説します。
この連載は
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
クラウドならではの費用対効果とは
クラウドの魅力として、費用対効果の高さがあります。従来の「所有」を前提としたシステム資源は、調達すれば資産となり、一定期間で償却しなければならず、その間、新しいものに置き換えることはできません。しかし、システム機器の性能は「18カ月ごとに2倍になる」というムーアの法則に当てはめれば、5年間で10倍になります。つまり資産化すると、購入時点からコストパフォーマンスが劣化し始め、償却期間中は改善の恩恵を享受できないのです。
これは、ハードウェアに限らず、ソフトウェアも、ライセンス資産として保有してしまえば、より機能の優れたものが出現しても簡単には置き換えることができません。また、バージョンアップの制約や新たな脅威に対するセキュリティ対策、サポートにも問題を来す場合があります。
一方クラウドは、「共用」が前提です。クラウド事業者は、自社のサービスに合わせて無駄な機能や部材を極力そぎ落とした特注の標準仕様の機器を大量に発注し、低価格で購入しています。さらに、徹底した自動化により、人件費を減らしています。また、継続的に最新機器を追加導入し、順次古いものと入れ替え、コストパフォーマンスの継続的改善を行っています。
例えば、世界最大のクラウド事業者であるAmazon Web Servicesは、2006年のサービス開始以来、およそ50回の値下げを繰り返してきました。見方を変えれば、クラウドを利用すれば、使える費用が同じでも数年後には何倍もの資源を最新の環境で利用できるのです。
もちろん、既に所有しているシステムをクラウドに置き換えるにはコストが掛かります。また、それまでの使い方をそのまま踏襲してクラウドに移行しても、クラウド固有の優れた機能やさまざまなメリットが享受できないばかりか、パフォーマンスの劣化、利用料金の高止まり、新たな運用負担など、むしろデメリットが大きくなる場合もあります。
クラウドは特性や機能を正しく理解し、適切に移行することが大切です。いったんうまく移行すれば、費用対効果の改善を長期的かつ継続的に享受できるわけです。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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