病院で働くPepper、命をつなぐIoTペンダント――富山発、地方の高齢者を救うIT(2/4 ページ)
少子高齢化や人口減少など、地方都市が直面している社会課題は多い。富山県氷見市では、人工知能を搭載したロボットやIoTなど、ITを活用して課題に立ち向かう人々がいる。その先進的な取り組みについて聞いた。
ロボットやAIの活用で患者の不安を軽減する
「このシステムでは、分からなかったところを戻って聞き直すといった操作もできるようにしています。白内障の患者さんには年配の方が多いのですが、相手が医師や看護師だと『よく分からんかったけど、もう1回聞くのかわいそうやし、やめとこ』みたいに気を使うことがあったりすると思うんですよ。
でも、ロボットなら遠慮せず何回でも聞き直せますよね。そうやって十分理解してもらい、最後に看護師さんが来て『大丈夫ですよ』と一言かければすごく安心するでしょう。まだ何でもかんでもロボットにやらせるという段階ではないので、人のコミュニケーションと組み合わせて活用していきたいと考えています」(川向さん)
同病院でのPepperの活用は、まずは白内障の手術前説明という限定的な利用からスタートするが、いずれは初診の際の問診や、他の診療科での利用なども進めていくことを考えているそうだ。
「既に小児科でもPepperを置きたいという話が出ています。眼科にPepperを入れたのは2016年2月ごろで、集団説明のとき以外は受付に置いているのですが、子どもたちがすごく喜んで、Pepperで遊ぶようになったんですね。
病院というのは、どちらかと言うと行きたくないところ、不安を感じるところです。子どもたちも同じだと思うのですが、今は『Pepperいるから遊びに行こうよ!』と言うようになってきた。先生方には『患者さんの不安を軽減したい』、『明るい病院にしていきたい』という強い思いがあるので、そういう点でもPepperは効果があると感じられているようです」(川向さん)
将来的には、IBMのWatsonと連携させ、説明を受ける患者の表情などから反応を分析して説明内容の改善につなげていくといったことも考えているという。
眼科ではPepper以外にも、患者の利便性を上げるテクノロジーの導入に前向きだ。現在川向さんは、病院内を自動走行する車椅子の開発を検討している。白内障の手術の際、受付から診察室や手術室まで自動で向かい、必要なときは停止や方向転換などの操作が簡単にできる車椅子があれば、慣れない病院内を移動する不安が軽減できるという狙いだ。
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