病院で働くPepper、命をつなぐIoTペンダント――富山発、地方の高齢者を救うIT(3/4 ページ)
少子高齢化や人口減少など、地方都市が直面している社会課題は多い。富山県氷見市では、人工知能を搭載したロボットやIoTなど、ITを活用して課題に立ち向かう人々がいる。その先進的な取り組みについて聞いた。
ペンダント型端末で高齢者見守り活動をサポート
川向さんが取り組んでいるもう1つのプロジェクトは、高齢者見守りシステムの実証実験だ。これは国の2015年度 農村集落活性化支援事業の助成を受け、氷見市の内陸にある久目地区が実施した取り組みの一部という。
本プロジェクトではITベンチャーのSkeed(スキード)と協力し、高齢者が身に付けるペンダント型の端末で収集した情報をBeaconを使った高齢者宅内ネットワークを介してインターネットに送信するシステムと、そのデータをWeb上に表示するシステムを構築した。データを見るのは、高齢者の見守り活動をしている地元の民生委員の人たちだ。
「端末にはセンサーが入っていて、高齢者の活動量と温度と湿度のデータが分かるようになっています。情報はそれだけですが、とても喜ばれました。民生委員の方は1人で5人から10人の高齢者を担当しているので、毎日全員を見に行くことはできないのが現状です。これまでは、心配しながらも数日ごとにしか様子を見に行けなかったところ、これで毎朝『動いている』と分かるだけで安心できると。もし活動が止まっているといった異常が確認できれば、すぐに駆け付けられますから」(川向さん)
最近では、災害に遭ったり倒れたりといった、高齢者の万一の際に救助者に情報を伝える仕組みとして「いのちのバトン」という取り組みが全国各地で広がりつつある。医療履歴や緊急連絡先、保険証のコピーなどを筒状の専用容器に入れ、住居内の冷蔵庫に保管しておくというものだ(参考リンク)。川向さんはペンダント型端末について、いずれは「いのちのバトン」のデジタル版のようなものに発展していくと考えている。
「医療履歴などもデータとしてこの中に入れて、地元の関係者と共有するシステムを作っておけば、日常的に民生委員が見られるだけでなく、何かあったときは救急隊員や病院も見られます。在宅医療や地域包括医療もとてもやりやすくなるでしょうね。個人情報なので、役所はこういうものを嫌がる傾向にありますが、逆に情報をどう管理するかのルール作りをさえきちんとできれば、時間はかかってもきっと実現できるでしょう」(川向さん)
関連記事
- おいしい牡蠣はデータではぐくむ IoTで変わる養殖ビジネスの今
海の様子がおかしい、震災以降、養殖牡蠣の収穫量が不安定になった――。養殖牡蠣の産地として知られる宮城県東松島を襲ったこんな事態をIoTで解決しようという動きがある。 - IoTが変える観光の姿――瀬戸内の離島が「電動バイクレンタル」を始めた理由
ソフトバンクと日本オラクルが、瀬戸内海の豊島で電動バイクのレンタル事業を始めた。LTE通信を行う車載機器をバイクに内蔵し、位置やバッテリー残量など、さまざまなデータを取得するという。IoTは離島の観光にどんな影響を与えるのだろうか。 - スイッチオンで即、農業IoT “ITかかし”が切り開く農業の新境地
ハードルが高い“農業×IoT”を、もっとカンタン、手軽に――。そんな思いから生まれた“21世紀のITかかし”が注目を集めている。このソリューションは、人手不足、後継者不足に悩む農家の救いになるのだろうか。 - ナースコールが消える? 福井大病院に見る近未来の医療現場
患者の大切な命と情報を守りながら、厳しい現場環境をどう改善していくべきか――。福井大付属病院ではインフラからデバイスまで大規模な変革に挑んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.