時候のあいさつ、「拝啓 ○○の候」って必要?:女子ヘルプデスク今昔物語 第9話(3/3 ページ)
今回はビジネス文書の研修。時候のあいさつや敬語の復習をするのだけど、新入社員からは“ムダな一文”に見えた模様。うーん、これは説明が難しい……。
わたし: そうね。社内文書の場合は、社外文書よりも正確さや詳しさが求められるわ。私は普段インシデント……えっと、PCに関するトラブルとか、使い方を教えてほしいといった問い合わせを受けて解決する部署で、トラブルや問い合わせの内容を記録するのも仕事の1つなの。私が作った記録は、私の同僚も上司も見るし、よりITに詳しい情報システム部の人も見ることになります。社内といえども誰が見るか分からない。だからこそ、誰が見ても分かるように、詳細に、正確に書く必要があるわけ。
……そう、ビジネス文書には常に「目的」がある。何のために書くのか、何のために読むのかを意識しないと、意味のない文書になってしまうこともある。当たり前のことだけど、実際に文書を書くときに、どれだけ「あとで誰かが読む」ことを意識できているかしら。そういう私も、研修のために勉強してて気付いたのよね。反省、反省。
この間、営業課の同僚に報告書について聞いてみたけど、5W1Hみたいな話はもちろん、訪問で起きた問題、もらった宿題、そしてその問題や宿題の解決にどういうスキルや人材が必要で、どれぐらいの時間がかかったか、ということを都度記録しているらしい。これは、自分たちのパフォーマンス測定に使ったり、同じくらいのスキルを持った別の営業が似た仕事をするときの目安にしたりするんだって。やっぱり「後から読む」ことを想定して書かないといけないんだわ。
こんなことを、新入社員に分かりやすく説明した(つもり)。
わたし: というわけで、社外でも社内でも、ビジネス文書は思い付いたことを思い付くままに書くものではないのね。なぜ書くか、なぜ読まれるか、何をどの程度書けば読み手の目的が達成できるか、どのような言葉を使えば誤解がないように伝わるか、といったことを意識して書かないといけない。
この「言葉」の中には敬語も含まれるのよ。文書って、それを読んでいるときには、書いた本人がその場にいないでしょ。書いた人が読み手を尊重しているのか、それとも、ばかにしているのか、言葉遣いだけで判断されてしまうのよ。書き手が読み手のことをばかにしているつもりはなくても、敬語が正しく使えていなければ、もしかしたら読み手は「こいつ、オレのことをばかにしているのか?」と思うかもしれない。だから、内容も敬語もちゃんと書くことが大事なの。
ビジネス文書の仮名遣い、ちゃんとできてます?
納得したのか、慣習と言われてしょうがないと思ったのかは定かではないけれど、その後、彼らは静かに研修を受けてくれた。もっとも、後半は演習が中心で、余裕がなかっただけかもしれないけどね。講座の最後に、演習で書いたビジネス文書を提出してもらった。それに赤ペンを入れようとしたとき、ふと手が止まる。文書に「所謂」という漢字が使ってあったのだ。
ビジネス文書では“補助的な語句は原則、平仮名にする”のがよいとされている。「所謂(いわゆる)」以外にも「或いは(あるいは)」とか「即ち(すなわち)」「様々(さまざま)」や「故に(ゆえに)」なども平仮名がよい。一方、その補助的な語句に強い意味を持たせたい場合は漢字にする。「全然」や「全く」「絶対に」といった語句には強い意味を持つ言葉なので、漢字でいいのだ。
わたし: 本人は書けなくても、PCなら簡単に変換できるからなぁ。次の講座で追加説明しとこ……。資料化するほどのことでもないし、ホワイトボードに書いてメモしてもらおう。メモの練習にもなるしね。
と、そこにA子が資料を作って持ってきた。
あちゃー、彼女の資料にも「即ち(すなわち)」と書いてあった。A子よ。お前もか。先輩が見本にならないと、新入社員から「先輩ができてないのに、僕たちやらないとダメですか?」って突っ込まれるの私なんだぞ。
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