GEはなぜ、NECとIoT分野で“特別な関係”になったのか:Weekly Memo(2/2 ページ)
NECとGEがIoT分野で包括的な提携を結んだ。GEは産業向けプラットフォーム「PREDIX」を軸に他のITベンダーとも提携しているが、NEC関係者によると「今回の提携が最も包括的」だという。“特別な関係”になった両社の思惑とは――。
GEにとって「最も包括的」なNECとの提携
「NECはさまざまなお客さまにIoTソリューションを提供している。2016年9月には当社の強みであるAI・ビッグデータ、クラウドサービス、サイバーセキュリティ、SDN(Software-Defined Networking)などの技術を組み合わせたIoT基盤“NEC the WISE IoT Platform”を確立した。この基盤や当社のSI力とPREDIXを連携し、さらに高度なIoTソリューションを実現する。今回のGEとの提携は、より広範なお客さまに幅広いIoTソリューションを提供し、NECのIoT事業をグローバルに一層加速するものとなる」(清水氏)
「あらゆる産業機器がSaaSモデルとして運用されるにつれて、GEのPREDIXはお客さまの変革に欠かせないプラットフォームになるだろう。NECとのパートナーシップを通じて異なる2つの企業が統一したプラットフォームを用いることで、確かなソリューションを提供できる。NECとのさまざまなコラボレーションを通じて、日本の企業は事業効率を高め、オペレーションを最適化し、多額のコスト削減を実行できるだろう」(ルー氏)
この両氏のコメントに、両社の包括的提携の核心が言い表されている。中でも筆者が注目したのは、「NECのIoT事業をグローバルに一層加速するものとなる」(清水氏)、「異なる2つの企業が統一したプラットフォームを用いる」(ルー氏)との発言だ。これらには両社それぞれの思いがにじみ出ているように感じる。
実は、今回の両社によるIoT分野での提携は、他の複数のITベンダーとも提携しているGEにとって「最も包括的」だという。NEC関係者は、「GEがこの分野で、技術、製品・サービス、SI、保守サポート、マーケティング、販売、人材育成にわたって提携したのはNECだけだ」と強調する。とすれば、両社はまさに“特別な関係”になったといえる。
「異なる2つの……」とのルー氏の発言は、それを象徴した表現と見て取れる。会見の質疑応答で「なぜNECなのか」と問われたサミュエルズ氏は、NECの日本市場での実績や技術力とともに「GEと補完し合えるところが多い」ことを挙げた。また、日本の製造業は世界中で最も要求水準が高いことから、日本市場での展開はとくに強力なパートナーが必要だと判断したようだ。
一方、NECにとっても今回の包括的提携は非常に大きな意義がある。榎本氏は会見で「産業向けIoT分野ではGEがベストパートナーだと判断した」と述べた。さらに先の関係者は、「まずは日本市場でしっかりと実績を上げ、それを弾みにGEと共にグローバル市場に打って出ていきたい。今回の提携はNECにとってその“切符”を手にしたということだ」と筆者に語った。「NECのIoT事業をグローバルに…」との清水氏の発言には、その思いが込められている。
ちなみに、NEC関係者からこうした話が聞けたのは、「今回の提携はNECがGEの軍門に下ったということではないか」とあえて切り込んだのがきっかけとなった。会見で両社が最も包括的な提携であることに言及しなかったのは、両社共に他のパートナー企業との関係があるからだと推察される。
とりわけ、NECにとっては産業向けIoT分野でのグローバル進出に大きな可能性を持つ“切符”を手にしたといえる。今回の動きは、日本のITベンダーが今後グローバル市場で生き残っていくための戦略の取り方を示唆しているともいえそうだ。
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