AWS日本法人が開いた「一風変わった会見」の背景:Weekly Memo(2/2 ページ)
AWS日本法人がAWSクラウドサービスの活用事例について一風変わった記者会見を開いた。会見を主導したのが経済産業省だったからだ。その背景とは――。
経産省の要望で会見を開いたAWS日本法人の意図
今回の会見にAWS側として臨んだアマゾンウェブサービスジャパン事業開発本部Mobile&IoT事業開発マネジャーの榎並利晃氏は、AWSクラウドがIoTにも数多く活用されている理由について、「低コストやスケーラビリティといったクラウドの特性がIoT活用においても大きなメリットとして受け入れられているとともに、AWSクラウドは数多くの第三者認証を取得していることから、セキュリティについても高い評価をいただいている」ことを挙げた。
さらに榎並氏は、「とりわけIoTでは、モニタリング、予防予知保全、作業効率・自動化、遠隔制御といった機能要件が求めれるが、AWSクラウドではこれらに対応したIoTプラットフォームを用意しており、70を超えるサービスを必要に応じて組み合わせて利用できるようにしている。さらに、パートナーエコシステムによってIoTプラットフォームの活用範囲が大きく広がってきており、幅広いユーザーニーズに対応できるものと確信している」と語った。(図参照)
あらためて今回の会見は、アマゾンウェブサービスジャパンが開いた格好ではあるが、内容は経産省主導で、選定ツールを開発した3社がそれぞれにプレゼンテーションを行うといった、一風変わったものだった。とはいえ、政府の施策であり、「IoT」「製造業」「中堅・中小企業」「クラウド」といったキーワードから見ても話題性は高い。
会見後、榎並氏に聞いたところ、実は今回の会見は経産省からの要望を受けて開いたという。経産省の思惑は前述した通りだが、「選定ツールのかなりの割合がAWSクラウドを利用している」(徳増氏)ことから、そのうちの3社のプレゼンテーションも合わせて、表向きアマゾンウェブサービスジャパンが会見を開く形になった。
徳増氏の言葉をもう少しかみ砕くと、政府の施策によって選定されたツールとは、開発した企業にとってはビジネスのためのソリューションであり、社内システムに適用するだけの話ではない。そのベースとしてAWSクラウドが「かなりの割合」で利用されているという事実は、AWSクラウドの存在感をあらためて感じさせるものである。
いずれにしても、今回の会見はアマゾンウェブサービスジャパンにとって非常にありがたい話だったに違いない。言い換えれば、同社のしたたかさが見て取れた会見だった。
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