グローバルでの事業強化に備え、ハイブリッドクラウドを整備――三菱電機の場合(1/2 ページ)
創立100周年を迎える2020年までに、グローバル展開を強化し、売上を拡大して営業利益率を向上させる――。そんな経営の目標に対応するため、三菱電機のIT部門は何に取り組んでいるか。IT戦略室長 木槻純一氏が語った。
総合電機メーカーである三菱電機グループは、ホームエレクトロニクス、半導体、通信、交通、エネルギー、産業、宇宙など12の分野で事業を展開している。近年はグローバルでの事業展開に注力しており、その拠点数は約300、従業員数は約13万5000人に達する。三菱電機 執行役員 IT戦略室長 木槻純一氏は、「NTT Communications Forum 2016」にて講演し、三菱電機グループのグローバル事業運営に向けたIT環境整備の取り組みを披露した。
木槻氏は「2020年に三菱電機は創立100周年を迎える。それまでに達成すべき目標として、『売上高5兆円以上、営業利益率8%以上』を掲げている。そのためには海外売上高の拡大が必須であり、グローバル展開の強化に向けた事業基盤の整備を進める必要があった。その一環としてIT基盤の強化がある」と取り組みの意義を話した。
三菱電機グループは、グローバルなIT環境の将来像として、3つの要素「セキュリティの強化」「いつでも、どこからでも、安心して、快適に利用」「事業運営効率化、拠点展開の負荷軽減」に取り組んでいるという。それを実現するために「セキュリティ対策の強化」「業務の生産性向上」「業務プロセスの標準化」というロードマップを作り、プロジェクトを進めている。
IT基盤強化の3つの狙い――セキュリティ、情報共有、スピードアップ
IT基盤の強化には、3つの狙いがあると木槻氏はいう。1つ目はサイバー攻撃対策の強化、2つ目はグループや拠点をまたがる情報共有とコミュニケーションの効率化、3つ目はIT基盤提供の迅速化である。IT基盤をスピーディに提供できれば、新規の販売拠点や生産拠点を早く立ち上げることができる。
セキュリティについては、膨大な端末数とグローバルな拠点の広さが課題だった。三菱電機グループで保有する端末の数は19万台にも達する。対象地域は日本国内にある関連会社が154社、ヨーロッパに10社、中国台湾に31社、中近東アフリカに3社、アジアオセアニアに32社、北米中南米に17社もあった。
当時は、セキュリティ上の課題として「攻撃された端末の特定が難しく、仮に情報が搾取されても情報を守れる環境にあるのだろうかという懸念があった」と木槻氏は振り返る。セキュリティの観点から、端末の一元管理が必要だったのだ。
この膨大な数の端末に対して、マルウェアの感染予防と感染端末の早期特定、隔離が可能な対策、情報漏洩対策を行ない、ウイルス感染の集中監視、自動検知、セキュリティパッチの自動適用などを一元管理する仕組みを作った。また機密性の高い情報に対する保護を目的として、ユーザー認証、適切なアクセス管理、自動暗号化、証跡管理などの仕組みも導入した。これらは2017年度中にグローバルでの導入を完了する計画である。
情報共有、コミュニケーションは、拠点、会社、国を超えても、リアルタイムでの情報共有、コミュニケーションを可能にする。それによって、従業員の業務生産性と働きやすさをサポートすることが目的である。
木槻氏は「グローバルな環境で生産性を向上させ、業務プロセスの標準化を図るには、グローバルにおけるツールの統一と365日安定したサービスの提供が必要となる。それを実現するには初期導入コストを抑えつつ、スケーラビリティの高いクラウドサービスが適している」と判断した。
具体的には、情報共有のポータルに「SharePoint」、メールとスケジュール調整に「Exchenge Server」、メッセージやWeb会議にコミュニケーションツール「Skype for Business」を選定したという。
「これらのツールの活用に加え、当社の独自機能を組み込み、メールの上長承認、ファイルを持ちだす際の自動暗号化を可能にした。まずは国内の約50拠点、約2万人を対象に完了しており、海外についてはこれから展開し、2020年までに終える予定だ」(木槻氏)
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