議論を呼ぶ「訂正できる」ブロックチェーン、そのメカニズムとは?:金融機関で検証進む(3/4 ページ)
アクセンチュアが開発を発表した「訂正できる」ブロックチェーン技術がビットコインのコミュニティーで議論を呼んでいる。同社では、閉じたパーミッション型ブロックチェーンの使い勝手を向上させるとともに、法制度への対応も果たすなど、金融機関らが活用する際のハードルを下げる技術だとしている。
オペレーティングコスト削減の効果も
ここで、あらためてブロックチェーン技術の意義を振り返ろう。「利害が異なる当事者同士でも、その記録内容は信用できる」という性質は、企業ユーザーにとって大きな可能性を秘めている。例えば、さまざまな国のさまざまな立場の当事者が参加するサプライチェーン上の商流を可視化するのにブロックチェーンは有用だ。
納期が守られなかったり、発注と異なる商品が納入されたり、未払いがあったりといった取引上の問題が発生した際に、発注や納品、支払いなどの諸情報が双方にとって信用できる、ごまかしがきかない形で記録されているなら、紛争解決の手間は圧倒的に少なくなる。
また、取引上のイレギュラーへの対処(「督促」「再発注」「キャンセル」「違約金の支払い」のどれかを判定して実施する、など)をプログラムで自動的に執行するようにしておけば、人間が紛争を解決する手間すら必要がなくなる。このような概念を「スマートコントラクト」と表現することもある。
さらにもう1点、紛争解決のような例外処理だけでなく、日常的な事務処理の負担軽減にもブロックチェーン技術は役立つ。従来、企業間におけるデータのやりとりでは、内容の確認作業(リコンサイル)が発生していたが、ブロックチェーン上の情報を信用できるなら確認作業をなくすことができる。
アクセンチュアでは、この特徴を「リコンサイル・レス化」と表現している。金融機関同士の決済や国際送金にブロックチェーンを使う発想が出てくるのも、リコンサイル・レス化により、送金に掛かる時間の(現状では国際送金には数日を要する)大幅な短縮が期待できるためだ。
インフラのソフトウェア化で低コストに
「信用できる記録」が必要ならデータベースを共有すれば事足りるのではないか、という意見もあるかもしれない。利害の対立がなければ、また、予算が潤沢ならば、それでもいいだろう。
では、利害が対立し、言い分が食い違う可能性がある当事者同士が、どんな方法で信用できる記録を共有できるかを考えてみよう。まず考えられるのは、当事者双方が信頼できる第三者機関の情報システムで情報を管理することだ。銀行を結ぶ全銀システムや、証券会社の注文を受け付ける証券取引所は、このような信用できる第三者機関だと考えることができる。だが、全ての業種で情報共有のための組織を維持し、情報システムを運営するのに必要な予算を捻出するのは非現実的だろう。
ブロックチェーン技術は、管理する組織も特殊な設備も必要なく、ソフトウェアのレイヤーにより「信用された記録」と「システムの可用性」を実現する。特筆すべきメリットは、耐故障性やセキュリティの機能が全てソフトウェアのレイヤーで実現されているため、従来の手法(第三者機関とハードウェアや設備によるセキュリティ確保)に比べてコストを抑えやすいことだ。アクセンチュアでは、この特性を「インフラのソフトウェア化」と呼んでいる。
例えば、クラウド上のインスタンスを複数使うだけで、耐故障性があり、セキュリティを確保したブロックチェーンを動かすことが可能だ。オンプレミスの場合でも高価なサーバを使わずに耐故障性を確保でき、地理的に分散させてディザスタリカバリの機能を持たせることがブロックチェーンの標準機能で実現できる。自分たちにとって現実的なコストで構成し、運用できるのもブロックチェーン技術の価値だろう。
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