議論を呼ぶ「訂正できる」ブロックチェーン、そのメカニズムとは?:金融機関で検証進む(4/4 ページ)
アクセンチュアが開発を発表した「訂正できる」ブロックチェーン技術がビットコインのコミュニティーで議論を呼んでいる。同社では、閉じたパーミッション型ブロックチェーンの使い勝手を向上させるとともに、法制度への対応も果たすなど、金融機関らが活用する際のハードルを下げる技術だとしている。
ハードフォークのコストとリスクを避ける
なお、従来のブロックチェーン技術でも、訂正する手段が全くないわけではない。“最後の手段”として、ブロックチェーンを巻き戻して訂正する「ハードフォーク」がある。Ethereum上の投資ファンドであるThe DAOが、2016年6月にハッキングで仮想通貨を不正移動させられたとき、仮想通貨を取り戻すためにハードフォークが実行された。
ただ、ハードフォークによる訂正は、OSのアップデートでデータの訂正を行うような措置なので、コストもリスクも高くつく。ハードフォークによる訂正のことを「歴史改変」と呼ぶ人がいるほどだ。実質的にシステム全体を一時的に停止させることにもつながってしまうため、できれば避けたい措置といえる。
カメレオンハッシュで訂正機能を実現
アクセンチュアが開発した技術は、前述したカメレオンハッシュと呼ぶ暗号学的な手法でハードフォークなしに過去を改訂できる。
ブロックチェーンで通常使われるハッシュチェーンは改ざん不能なようにブロックどうしを結び付けるが、カメレオンハッシュでは、管理者だけが持つ暗号鍵により「鍵」の開け閉めができる機能を提供する。過去のブロックを結び付けたカメレオンハッシュの「鍵」を開けてブロックの連鎖をつなぎ変えることで、過去の情報を訂正する。
なお、この操作を行うと、カメレオンハッシュではない従来型のハッシュチェーンは壊れてしまうが、これは後から訂正箇所が発見できることを意味する。つまり、無制限に訂正を許すわけではなく、必要最低限の訂正をハードフォークなしに実現するということだ。
同社は今回の発表の反響が大きいことを把握しており、取材の場でも「ビットコインのような、パブリックブロックチェーンのための技術ではない」と何回も強調した。ビットコインのようなパブリックブロックチェーンと、同社がターゲットとしている企業どうしを結ぶパーミッション型ブロックチェーンとは大きく異なる概念なのだ。
反響やニーズの大きさから、同社の顧客がブロックチェーンに大きな期待を寄せていることも伺える。今後、ブロックチェーンを企業システムで活用する事例は増えていくだろう。
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