毒をもって毒を制す? 本格セキュリティ家電に“まさか”の技術:半径300メートルのIT(2/2 ページ)
ゲーム機やNAS、STBなどの“ネット家電”が増えている今、ここに攻撃を仕掛けるケースが出始めています。こうした中で登場したのが“ネットの脅威から家全体を守る”セキュリティデバイス。その仕組みがなかなか面白いのです。
「家庭内デバイスのチェック」も定期的にしてくれる
注目すべき点はもう1つあります。毎日、家庭内の各デバイスに対してセキュリティチェックをする機能です。これを実行すると、家庭内の機器に安易なパスワードが設定されていないか、不正な通信を受け取ってしまうような設定になっていないかを確認してくれます。
これは主に、ルーターが対象になるでしょう。ルーターはインターネットからの攻撃を防ぐ役割があるものの、内側からの攻撃はあまり考慮しておらず、「IDとパスワード」に頼り切っているという面があります。ルーターのID、パスワードは初期設定のものから変更し、安易ではないものを設定すべきですから、この機能は役に立つはずです。
このデバイスのいいところは、設定がとても簡単であることです。電源ケーブルとイーサネットをつなぎ、iOSまたはAndroidアプリをインストールし、個別に設定されたコードを入力するだけで使えます。後はPCやスマホなどのデバイスとルーターとの間に入り込み、通信の中身やURLをチェックし、問題のある通信内容を通知したり、場合によっては通信を止めたりできます。既知のフィッシングサイトならば、見る前に止めることもできます。
“まさかの仕組み”で動いている!
しかし、このデバイスは「イーサネット1本」だけでしかつながっていません。それなのに、全通信を“のぞき見”できるのは不思議な気もしますね。実はこれ、“サイバー攻撃”と同じような方法を採っているのです。「ARPスプーフィング」と呼ばれる攻撃手法で使われている技術で、「ルーターに向けた通信内容を“ルーターになりすまして”横取りし、検査した上でルーターに送る」ということをしているのです。
これを知って私は、「家族を守るために“攻撃の手法”が使われるのは面白い」と思うとともに、「家庭内に入り込みさえすればこういうことも簡単にできてしまうものなんだ」と驚きました。
「ウイルスバスター for Home Network」を接続すると、PCが認識しているルーターのIPアドレス192.168.1.1のMACアドレスが「54:2a:XX:XX:XX:XX」(ウイルスバスター for Home Networkのもの)に変化する
「家庭用ルーター」はセキュリティリッチな機能がトレンドに?
今回紹介したデバイスは、ルーターとは切り離して単独で導入できるのも興味深いところです。多くの人は、なかなかルーターを買い換える機会もないですし、そもそもルーターをレンタルで使っている人も多いのではないかと思います。そういうところにアドオンでセキュリティ機能を追加できるのは面白いと思います。
そして、こうした技術を実装したルーターが他社からも登場しています。次に家庭用ルーターを買い換えるときには、「いかにセキュリティ機能が充実しているか」が重要なチェックポイントになりそうです。
「ウイルスバスター for Home Network」は2万円ほどで購入でき、翌年からは毎年6480円で利用可能です。「家族がサイバー攻撃を受けることが不安」という人は、試してみる価値がありそうです。
著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
筆者より:
2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。
これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。皆さんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。
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