「直感的な操作で誰でも使える」 そんなソフトウェアなど存在しない:失敗しない「外資系」パッケージソフトとの付き合い方(2/2 ページ)
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。「提案の時は簡単に使えると聞いていたのに……」「動作確認のスクリーンショット取らないの?」 そんなユーザーとベンダーの“すれ違い”から起きる悲劇についてお話します。
もちろん、ベンダー側が誤解のない説明をするよう努めるのも大切ですが、提案の際に自社製品の利点や特徴を強調するのは自然なことも言えます。それをうのみにすることなく、マニュアルの種類やトレーニング内容、コンサルティングサービスの有無などを確認することで、実際にその製品を駆使できるようになるためには、どのような取り組みが必要か十分確認するのがよいと思います。
ベンダー選定の際も、製品で実現できることだけではなく、ユーザーがソフトウェアの価値を最大限引き出すための施策や体制が充実しているかに注目するとよいでしょう。
失敗事例11:自社の“当たり前”は、世間一般の“当たり前”ではない
ユーザー企業の社内で「当たり前」とされているルールがベンダーに共有されておらず、認識違いを招くケースも見逃せません。例えば商用環境でのリリース作業の場合、以下のようなものがあります。あなたの会社ではどうでしょうか。
- 事前に作業手順書を作成し、実施日の2週間前に承認されなければならない
- 必ず実施者と確認者の2人体制で作業を行う
- エビデンスとしてスクリーンショットを取得する必要がある
- ユーザーの利用時間外である休日・夜間に実施する必要がある
「え、これって当たり前じゃないの?」と思われた方は要注意。あなたの会社では当たり前のルールであっても、世の中全ての会社がそうしているわけではないからです。反対に、「それはさすがに当たり前だと思わないだろう」と思われた方も、略語や用語など、社内のみで通じる言葉を、社外のベンダーに使っているかもしれません。
ベンダー側も、分からないことや曖昧な言葉は確認すると思いますが、暗黙的に社内に存在するルールを知るのは難しい。リリース直前に例に挙げたような話が出て「それは想定していません」となるわけです。同スキルの作業者が倍必要になれば人件費も倍になりますし、追加の書類を作成するには、人手も時間もかかります。
特にベンダーが外資系の場合、契約書(見積仕様書)に記載した実施内容以外のことは原則契約範囲外ですし、追加費用の請求も想定されます。「外資系の会社は契約書に書いてないことはやってくれないのか」と思われるかもしれませんが、契約書に書かれていない作業をしないことより、本来計画していたことができずに、プロジェクトの進行に影響が出ることの方が大きな問題です。
そうならないためにも、商用環境での作業に必要な前提をあらかじめ明文化し、ベンダーと共有することが必要です。商用環境での作業だけでなく、用語や作法といった社内のルールは、誰も教えてくれない(当たり前のように使っている)こともあるかと思います。社内向けの業務割合が多い方は特に、メディアや社外の人など、外の世界の情報に触れて、社内を客観的に見る目を養うとよいでしょう。
関連記事
- 連載:失敗しない「外資系」パッケージソフトとのつきあい方
- 外資系ベンダーが「何でもやってくれる」なんて、あり得ない!
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。導入プロジェクトも佳境に差しかかり、いよいよ本格稼働に移行……というときにアレ? 今回はそんな失敗例を紹介します。 - なぜ、日本の企業は「標準化」ができないのか?
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。今回は、重要だけれども失敗しやすい「標準化」のお話です。日本のIT運用の現場において、驚くほど進んでいない標準化。その理由はどこにあるのでしょうか。 - ソフトウェア、「タダ」より高いものはない
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。今回紹介するのは、価格に関するお話。皆さん「無料」って言葉は好きですよね。パッケージソフトウェアの世界では、そこにワナが潜んでいるわけですが……。 - 機能比較の「○×表」を信じて大失敗!?
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。今回紹介するのは製品比較のときに使う「○×表」にまつわる落とし穴。ベンダーもボランティアではなくビジネスである以上、相手の言うことをうのみにするのは避けたいところです。 - そもそも、パッケージソフトとSIを混同してはいけない
読者の皆さんは、パッケージソフトの導入で失敗したことはありませんか? うまく使えばスピード導入につながりますが、一歩間違えるとコストは増えるわ、時間はかかるわで大変なことになります。この連載では、そうならないための注意点やコツを紹介していきます。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.