なぜSAPはPaaSの名称から「HANA」を外したのか:Weekly Memo(1/2 ページ)
SAPがクラウドプラットフォームを強化した。注目されるのは、これまで「HANA」を前面に出していたPaaSの名称を「SAP Cloud Platform」に変えたことだ。その意図とは――。
1年足らずで顧客数が2.5倍に増えた「SAP Cloud Platform」
「SAPはこれから、従来のERPをはじめとしたアプリケーションだけでなく、アプリケーションを熟知した当社ならではのプラットフォームにも一層注力していきたい」――。SAPプラットフォーム&イノベーション担当シニアバイスプレジデント兼グローバル・ゼネラルマネージャのロルフ・シューマン氏は先頃、SAPジャパンが開いた記者会見でこう強調した。
会見の内容はクラウドプラットフォームの強化について。これまで「SAP HANA Cloud Platform」と呼んでいたPaaSを「SAP Cloud Platform」に改称したのをはじめ、新サービスの提供、日本でのデータセンターの開設、パートナー企業との協業などが発表された。シューマン氏の冒頭の発言は、SAP Cloud Platformへの力の入れようを示したものである。
会見に臨むSAPプラットフォーム&イノベーション担当シニアバイスプレジデント兼グローバル・ゼネラルマネージャのロルフ・シューマン氏(右)とSAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏(左)
改称前のSAP HANA Cloud Platformは2013年5月に発表され、継続的に改良されてきた。日本では2016年6月にSAPジャパンが会見を行い、本格的な事業展開を図ってきた。当時のSAPの動きやサービスの内容については、2016年6月13日掲載の本コラム「SAPがHANA Cloud Platformに込めた大いなる野望」を参照いただきたい。
ちなみに上記コラムでは、グローバルな導入実績として昨年5月末時点で2610社と記しているが、今回の会見でシューマン氏は現在6500社の顧客ベースがあることを明らかにした。とすると、1年足らずの間に顧客数は2.5倍に膨らんだことになる。
また、今回の会見では、Appleとの提携に基づいた「SAP Cloud Platform SDK for iOS」やIoT(Internet of Things)活用の基盤となる「SAP Cloud Platform IoTサービス」などの新サービスや、東京データセンターの稼働と大阪データセンターの2017年下期開設予定も発表している(図1)。
さらにパートナー企業との協業では、グローバルで600社から1000種類を超えるSAP Cloud Platform対応アプリケーションが既に提供されているほか、日本でもおよそ50社のパートナーが今回の発表に賛同を表明した(図2)。
このほか、SAP Cloud Platformの認定資格を3月から開始しており、対象となるトレーニング受講者は国内で3000人を超えているという。
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