創業63年、箱根の老舗ホテルが人工知能を導入した理由:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(4/4 ページ)
公式Webページに機械学習を使ったFAQシステムを導入した、箱根の老舗ホテル「ホテルおかだ」。こうした最新ITを導入する裏には、旅行業界における大きなビジネスモデルの変化があった。
NECから温泉旅館へ、境界を飛び越えて見えてきたもの
エンジニアから、温泉旅館という全く異なる世界に飛び込んだ原さん。ITを生み出す側とITを使う側、両方の立場を経験して得たものは大きいという。特に、経営全体を見るようになってから、ITに対する考え方が変わった。
「顧客やライバル、市場がある中で、自社の戦略があり、その戦略を作るために、人的なリソース、金銭リソース、施設管理など企業の全ての要素があるわけです。自社が取り組むべき課題が明確になった中で、ITって会社全体から見たら何をしているのか――ということが見えるようになると、優先順位がすごく明確になって、ITで変化を加えるべきポイントが見えてきました。
NECで働いていたころはそのレベルまで見えていませんでした。自分たちの活動が、クライアントの会社にとっていいことかどうかが分からなかったんです。ホテルおかだでも、経営ではなく、フロントという立場でずっとやっていたとしたら、ただ単にみんなにとって使いやすいものを作っているだけで、経営に対してインパクトを与えられるものを作れていたかは疑問ですね」(原さん)
NECからホテルのフロント、そして経営へ――。会社を越え、役割を越え、さまざまな視点を得たことで、原さんのITに対する考え方はその都度変わってきた。ITに対する関わり方や立場が変わることで、その目的やITの使い方は変わっていく。これこそが、ビジネスを推進させるための“道具”として、ITを正しく使いこなしているといえるのではないだろうか。
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