そのWebページ、“みんな”が読めますか――企業が知るべき「Webアクセシビリティ」とは?:週末エンプラこぼれ話(4/4 ページ)
インターネットが当たり前のインフラになった今、「誰でも同じように情報にアクセスできる」というテーマに再び注目が集まっている。その1つが「Webアクセシビリティ」だ。最近ではクラウドがその普及の後押しをしているのだという。
Webページ制作に「Webアクセシビリティ担当」を
加藤氏は「Webアクセシビリティ検査は専門技術」だと話す。一般的にWebページは、ディレクター、コピーライター、グラフィックデザイナー、コーダーといった人が集まり、分業で制作していくが、それと同等の存在として、Webアクセシビリティ担当が必要なのだという。
「実際、Webページを作る人もアクセシビリティに対応しているかどうかまでは分からないのが普通です。発注先の業者が『大丈夫ですよ』と言ったら、それを信じるしかありません。私たちは、それをできるだけ可視化しようとしているだけです。規格に沿っているかどうかは、調べれば分かる話ですから」(加藤氏)
アクセシビリティに加えて、リンク切れやセキュリティの堅牢性、そして電話番号や個人のメールアドレスといった情報が、誤って表に出ていないかも可視化される。これはホールディングカンパニーには非常に有効だ。グループ企業や子会社に対し、ガバナンスを取りやすくなる。
「今、一番危惧しているのは、できないのにできたことにしている、何もやっていないのに『できている』と言っているWebサイトが多いことです。最初から問題があると分かっているのであれば、そう認識して見ますが、知らずにやってきて、こんなものかと誤解されるのが最も良くないパターンです。
日本では障害者差別解消法が施行されてまだ1年くらい。罰則こそありませんが、訴えられた場合は、社名が公表されます。そうなれば、事業活動に大きなダメージを負うことになるのです。とはいえ、Webアクセシビリティ対応は『0』か『1』かではありません。自社で対応可能なところから、改善に取り組むことが大事だと思います」(加藤氏)
Webアクセシビリティ普及の裏に「クラウド」の力
インフォ・クリエイツがWebアクセシビリティのビジネスを始めてから約15年。近年、Webアクセシビリティの知名度が上がり、ビジネスが増えているのは「クラウド」のおかげだと加藤氏は話す。
「障害者の方が自宅で検査技術と資格を取得できるのもオンラインで講座を受けられるからですし、手間のかかる目視検査が自宅で行えるのもクラウドのウェブアクセシビリティ適合性評価システム(Libra)があるためです。
今回AMCCでもクラウドを採用しましたが、もともと付き合いがあることもあり、IBMのクラウドは信頼できる性能だと分かっていました。オンプレミスでシステムを構築することなく検査ができるというのは、利用のハードルを下げ、Webアクセシビリティが一層普及するために大切なことだと思っています」(加藤氏)
もっと企業にもWebアクセシビリティに興味を持ってほしい、理解を深めて欲しい。「2020年までに、こうした会話が自然にできるようになれば」と加藤氏は話す。たとえHTMLに詳しくないWebページ管理者でも、簡単にアクセシビリティの対応ができる――そんな世界が実現するのは、そう遠くない話かもしれない。クラウドの普及は、こんな業界にも大きな影響を及ぼしているのだ。
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