システム導入が爆速に? 「超高速開発」の出番ってどこですか?:本当はうさんくさくない、超高速開発のリアル(2/4 ページ)
プログラムの自動生成でシステム開発を高速化すると注目される「超高速開発」は、本当に使える技術なのか? 実例を交えながら、その実態や真価を発揮する使い方を解説します。
超高速開発の意義
では次に「超高速開発とはどのようなケースに向くのか」を説明しましょう。
例えば、開発効率を高めるために 「フルスクラッチ開発などするな。業務をパッケージに合わせろ。それがシステム導入成功の秘訣だ」という人もいますよね。差別化する必要性の低い定型業務(例:財務会計)であればなおさらです。
一方で、業務のやり方の違いは、競争力の源泉ともなります。他者が定義した「ベストプラクティス」がその企業の文化にフィットするとは限りませんし、パッケージによって標準化されることで競合と同じことしかできなくなったら、本末転倒です。
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント、白川克氏は、著書『会社のITはエンジニアに任せるな!―――成功率95.6%のコンサルタントがIT嫌いの社長に教えていること』で、「プラント型IT」というコンセプトを出しています。
私はこれを、「企業固有のノウハウや強みをシステムへと落とし込み、鍛え上げたもの」と理解していますが、このようなシステムは当然“ワンオフもの”であり、自分で汗を流して作り上げるしかありません。そうして作った仕組みは、他社がそう簡単にまねできるものではありません。
だからといって、安易にフルスクラッチ開発に手を出すと痛い目にあいます。フルスクラッチ開発は「お金と時間がかかって、失敗する可能性もそこそこあり(※3)、保守もシンドい」ため、採用には慎重を期すべきです。
しかし……もしも「安く早くできて、失敗する可能性もそこそこ低くて、保守もシンドくない」システム開発ができるならば、もっと気軽に、“自社の目的、身の丈にフィットしたシステムを作る”という選択をしてもよいはずです。このようなニーズに応えるのが「超高速開発」です。
例えばこれをスーツの購入に例えると分かりやすいかもしれません。既製服は安いですが、フィットさせるには丈を詰めたりする必要がありますし、フルオーダーのスーツは完璧なフィット感が得られるかわりに値段が何十万円もします。つまり、
- 既製服……パッケージを買って微調整して使う
- フルオーダー……フルスクラッチ開発
というイメージになるわけです。
第3の選択肢としてセミオーダーという仕組み(※4)があり、既製服をはるかに超えるフルオーダーに近いカスタマイズができて、10万〜20万円という価格感だとしたらどうでしょう。つまり、
- 既製服……パッケージを買って微調整して使う
- フルオーダー……フルスクラッチ開発
- セミオーダー……超高速開発
というわけです。
万能型ツールから用途特化型ツールへ
超高速開発は、ここ数年で台頭してきた新技術というわけではありません。その長い歴史の中で名称が「CASEツール」→「MDA」→「超高速開発」と変遷しているだけで、技術自体は30年以上前から存在します。
当初は「何でもできる万能ツール」を目指したのですが、後に、「そんなものは非現実的である」と考えられるようになりました。一言で業務システムといってもその目的や特性は千差万別です。つまり、1つのソフトウェアで全ての業務システム開発に対応するのは無理があるのです。例えば当社の製品では、
- 最も工数を要する、UIまわりの開発自動化にフォーカス
- 一定以上の複雑な業務ロジックは全て手書き
- 操作の基本となるCRUD(※5)ごとに画面パターンは固定。自由な画面遷移は不可
- 1つの画面でできることは原則として1つだけ。その組み合わせで複雑な業務を表現する
という割り切りをしています。
この割り切りが受け入れられない案件には適用できませんし、適用できるように機能拡張するつもりもありません。仮にFacebookのようなものを作れるかと問われても、「逆立ちしても無理です!」と笑顔で答えるでしょう。
私の観測範囲では、どのベンダーの製品も、程度こそあれ、このような割り切りをしています。その割り切りの度合いが、各製品の個性となります。
※3: システム開発の失敗確率は諸説ありますが、少なくとも30%以上というのが共通認識のようです。
※4: 実際はもっと細かい分類があり価格もピンキリですが、ここでは単純化しています。
※5: データベースへの操作コマンドであるCreate、Read、Update、Deleteのacronym。
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