働き方改革は、経営層の固定観念を壊す「攻城戦」 君たちはその「参謀」になれ:エバンジェリスト澤氏が伝える「意識改革」(4/4 ページ)
社会的な関心が高まる一方で、現実はイメージと全く違うものになってしまうことも多い「働き方改革」。どうすれば本当に改革できるのか。日本マイクロソフトのエバンジェリスト澤氏は、そのための動き方を、経営層の固定観念を崩す「攻城戦」に例えて説明した。
AIの活用で、人の役割はシフトする
さあ、入城を果たした軍勢が最後に目指すのは「天守閣」だ。参謀として、天守閣に攻め入る際の武器は“未来感”だと澤氏は言う。
今、経営者が未来感を感じるテクノロジーの筆頭はAIだろう。機械学習によるAIを経営者に説明するに当たって、ITエキスパートが伝えるべきポイントとして澤氏が挙げたのは、以下の2つだ。
- AIは過去の事実の延長線上に未来があると考える
- AIは「相関関係」を示してくれるが、「因果関係」は説明してくれない
「気温が高いとソフトクリームが売れるというのは、過去の事実に基づいた相関関係。一方で、人は気温が高いと冷たいものが食べたくなるというのが因果関係。因果関係は『インサイト』とも呼ばれ、ビジネス上の意思決定では重要な知見ですが、AIは因果関係までは説明してくれません。インサイトは人間が推測する必要があるのです」(澤氏)
実際に、Microsoftのファイナンス部門では、売上予測にAIを活用しようと、自分たちの持つデータを基に機械学習を繰り返して、人間よりも予測精度が高いAIを開発しようとしたそうだ。ある意味で、自分たちの仕事を奪いかねない動きではあるが、彼らはそれに意欲的に取り組んだ。
「ファイナンスの担当者たちは、単なる経理作業者から、分析結果にインサイトを与え、意思決定に影響を与えるCFO(最高財務責任者)的な役割へと転換することを望んでいました。近年、AIやRPAが人間の仕事を奪うといわれていますが、AIがうまくできる作業はAIに任せて、人間はAIには到達できないインサイトから、未来を創造する役割へとシフトしていくこと。これがAIを正しく活用するためのマインドセットなのだと思います」(澤氏)
言葉からは裏方のイメージが強い「参謀」だが、働き方改革の推進役として強いリーダーシップが求められると澤氏は言う。それは、これからも組織で求められ続けるスキルなのだ。
「企業にとって重要なのは、テクノロジーを使うことではなく、使った結果として価値を生み、マーケットで高い競争力を発揮できること。素晴らしい未来を形にするために、テクノロジーは不可欠です。われわれはテクノロジーサイドにいる人間として、この素晴らしさを伝え、未来につなげていかなければいけません。ぜひ一緒に未来を作っていきましょう」(澤氏)
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