24年前はどうだった? 銀行システムの進化をめぐる“今昔物語”:Weekly Memo(2/2 ページ)
巨大で頑強なITの象徴である銀行のシステムが変わろうとしている。この変化に大きな影響を及ぼしそうな動きがこのほどあった。この機に、筆者の取材録から24年前の銀行システムの動向ものぞいてみたい。
24年前に描いた「銀行システムの今後の姿」とは
さて、この機会に、銀行システムの動向に注目してみたい。まず、現在ホットな動きとして注目されているのは、みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほ銀行およびみずほ信託銀行が、次期勘定系システムへの移行を進めているプロジェクトだ。
みずほFGの勘定系システム統合を巡るプロジェクトについては、これまで2度の大規模な障害を経て、4000億円超といわれる資金を投入して進められてきた。当初は2016年春に統合する予定だったが、開発が遅れた経緯もある。それだけに、今回最後にして最大の正念場を迎えている。
また、先述したNTTデータの動きと対比して見られるのが、日本ユニシスと日本マイクロソフトが2018年3月に発表した、銀行の勘定系システムの稼働基盤にパブリッククラウドを適用するという共同プロジェクトだ。日本ユニシスは「Windows Server」や「SQL Server」をベースとしたオープン勘定系パッケージソフト「BankVision」を開発して2007年に稼働させ、これまで地方銀行10行が採用している。
この共同プロジェクトの話と先ほどのみずほFGの動きについては、2018年3月26日掲載の本コラム「昔ながらの巨大プロジェクトを尻目に、銀行の『勘定系クラウド』が動き出す」を参照していただきたい。また、これまで受け継がれてきた巨大な銀行システムの全体像については、2015年6月29日掲載の本コラム「パブリッククラウドは銀行システムにどこまで広がるか」で、図解入りで解説しているので参考にしていただきたい。
最後に、銀行システムの変遷をたどるうえで参考資料になればという思いから、24年前に筆者が新聞記者だったころの「都銀にみる巨大システムの行方」と題した執筆記事(図2)があるので紹介しておきたい。ちなみに、同記事はこのテーマの6回連載の最終回で、当時あった都市銀行11行を取材して書いた。従って、小見出しにあるように、「勘定系をスリム化」「情報系のフル活用」「銀行の電子化」といった動きは、手前みそながら当時としてはポイントを突いていると思う。
そして、ぜひ見ていただきたいのが記事下方の図だ。本文にもあるように、今後の銀行システムの姿を、都銀のシステム担当者やコンピュータメーカーの金融分野の事業担当者の見方をもとに図示したものである。当時は一生懸命つくった記憶があるが、あらためて見ると、超並列化や分散処理の概念は入ってきているものの、そんなに大きな変化はない。とくに勘定系についてはほとんど変化がないまま、今日に至っているという印象だ。
そう考えると、今回のNTTデータの動きは、銀行システムに対して影響力の大きいソフトが、オープン化、さらにはクラウド利用に向かうことが明示された形で、進化の重要なプロセスが確実に動いたように感じる。と同時に、24年前に上記のような取材を行った筆者としては、銀行システムがいかに慎重に扱われてきたかとの印象を改めて強く持った。
その銀行システムがいよいよ変わる。いや、変わらざるを得ない状況に立たされている。あらためて、今後もライフワークの1つとして注視していきたい。
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