10年後、銀行は存在しているのか デジタル金融の行方:Weekly Memo(2/2 ページ)
デジタル化の進展に伴って金融機関はどのように変わっていくのか。10年後、銀行はどんな姿になっているのか――。富士通の記者説明会で語られた今後の動向を紹介しよう。
10年後の銀行の姿とは
では、銀行のDXが進展すると、ビジネスはどのように広がっていくのか。隈本氏によると、2つの方向がある。1つは海外など市場の拡大、もう1つはビジネスモデルの拡張だ。そして、それらに求められるICTとして、前者は「事業内容・規模の変化に対応できる柔軟かつスケーラブルなICT」、後者は「感度の高い顧客層に訴求可能な先進的・特徴的なサービスの実現」が挙げられるという。
それらを踏まえて、富士通が「デジタル時代の金融サービス」として描いたのが、図4である。先ほどの前者のICTは「素早いサービス投入」「安心・安全」などをポイントにバックエンドへ適用され、後者のICTは「外部と簡単につながる」「感動的なユーザー体験」をポイントにフロントエンドへ適用される形となる。
隈本氏に続いて説明に立った富士通の坂本真司 第一金融ビジネス本部長代理は、隈本氏の話を踏まえたうえで、10年後の銀行の姿を図5のように描いた。メガバンクとネットバンクは「バックエンド特化型銀行」および「生活・事業浸透型銀行」として、地銀が担う「フロント/領域特化型銀行」や「X-tech」「異業種」にも銀行機能を提供するといった構図だ。この図は他と比べてシンプルだが、示唆に富んだ内容である。
これに対し、坂本氏は富士通の今後の金融ビジネスとして、これまでのように顧客の要望に応じるだけでなく、富士通からも新たな提案をどんどん行って顧客とビジネスを共創。さらには富士通自身も新たな金融サービスを展開できるようにしていく考えを示した。
図6は、富士通のデジタル金融向けのソリューション体系を表したものである。4つのドメインからなり、中でもデジタルバンキングそのもののソリューションとなるのが、現在ソニー銀行と開発を進めている「FUJITSU Banking as a Service」、略して「FBaaS」(エフバース)である。
10年後の銀行の姿という説明があったので、会見の質疑応答で「20年後は、もはや現在の銀行の姿は跡形もなくなっているのではないか」と、あえて聞いてみた。すると、隈本氏も坂本氏も異口同音に、「姿形は大きく変わるだろうが、20年後でも全くなくなってしまうことはなく、メガバンクやネットバンクは10年後と同様、銀行機能を提供するプラットフォーマーとして社会的役割を担っているだろう」との答えだった。
もちろん、現実的には法制度もあるので銀行が消滅することはないが、そうした規制も時代とともに変わっていくだろう。銀行が変われば他の産業にも大きな影響を及ぼすのは間違いない。その意味でも大いに注目したい。
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