転送が遅い、保守が煩雑、コストがかかる――クラウド移行の課題、ハイブリッドクラウドなら解決できるのか:Weekly Memo(1/2 ページ)
オンプレミスとクラウドの両環境を利用するハイブリッドクラウドに対する企業ニーズが高まる中、Microsoftが「真のハイブリッドクラウドを実現できるのは当社だけだ」と説く。果たして、どういうことか。
ハイブリッドクラウド戦略で競合他社を挑発
「単純に今ある仮想システムをベアメタルの“クラウドと呼ばれるサーバ”に置き換えるだけでは、ハイブリッドクラウドではない」――。こう語るのは、日本マイクロソフトの浅野智 業務執行役員クラウド&エンタープライズ本部長だ。同社が先頃開いた「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)における最新インフラへの移行支援に向けたハイブリッドクラウド戦略」に関する記者説明会でのひとコマである。
Amazon Web Services(AWS)とVMwareの協業商品である「VMware Cloud on AWS」を意識した発言とみられるが、果たしてその根拠は何か。最近のIT関連の会見では、競合相手を挑発するような熱っぽい発言をあまり聞かなくなったが、浅野氏の話にはそうした熱意とともに「ハイブリッドクラウドのありよう」について考えさせられるところがあったので、今回はこの話題を取り上げてみたい。
まず、Microsoftがハイブリッドクラウドを推奨しているのは、多くの企業にオンプレミスで使われているサーバOS「Windows Server 2008」が2020年1月14日に、データベースソフト「SQL Server 2008」が2019年7月9日にサポートを終了するのに伴い、まさしくハイブリッドクラウド環境への移行支援を促進しているからだ。
8月に発表された移行支援策では、ユーザーの利用状況に応じて「オンプレミス環境での最新OSへのアップグレード」「クラウド環境(Microsoft Azure)への再ホスト(リフト&シフト)」「クラウド環境への再設計による移行(リファクタリング)」といった3つのフェーズを用意。さらに、これらの移行支援策を推進するために、ユーザーの課題に合わせて適切な戦略パートナーを紹介する「マイクロソフトサーバー移行支援センター」を設立。戦略パートナーは8月の発表時点で57社が参画した。
その時の動きについては、8月13日掲載の本コラム「AWSに顧客を奪われるな! Windows Server新環境への移行に向けたマイクロソフトの“深謀遠慮”」で解説しているので参照いただくとして、その後、移行支援センターを通じて4000社を超える顧客企業に意向を聞いたところ、およそ6割がオンプレミスからクラウドへ移行したいと考えていることが分かったという。つまり、8月の発表が奏効したのである。
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