Microsoftは、「Amazonと戦う流通業者」の救世主になれるか:Weekly Memo(2/2 ページ)
Microsoftが流通業向けビジネスに注力している。今や同分野の巨大なディスラプターとなったAmazonと戦う流通業者たちを支える“対立軸”になれるか。
WalmartとMicrosoftがAmazon対抗勢力に
さて、ここからは今回のテーマにおけるパートナーシップと対立構図に注目したい。
藤井氏はグローバルにおける流通業者とのパートナーシップとして、図3に示すように、米国の流通業では売上高ランキング1位の米Walmart(ウォルマート)や2位のKroger(クローガー)などと戦略的提携を結んでいることを説明した。
とくに、2018年7月にパートナーシップを結んだWalmartとは、5カ年計画で“共創”し、インテリジェントリテールを実現しようというもので、米Microsoftの流通業向けビジネスの象徴的な事例となっている。それを踏まえて藤井氏は、「まだ公表できる段階ではないが、日本でもWalmartとのパートナーシップのような象徴的な事例を紹介できるようにしたい」との意気込みを語った。
筆者が注目したのは、この藤井氏の発言である。すなわち、日本マイクロソフトの流通業向けビジネスでもフラグシップになるような事例を公表できるようにしたい、というわけだ。
ちなみに、同社は今回の会見で、Smart Storeの賛同事業者としてイオンやローソンの名を挙げたが、藤井氏が言う「まだ公表できる段階ではない」のならば、もっと象徴的な事例としてのパートナーシップが今後、公表されるのかもしれない。
なぜ、そうした象徴的な事例に執着するのか。それは、米国においてWalmartとMicrosoftのパートナーシップが、今や流通分野の巨大なディスラプターとなったAmazon.comの対抗勢力の急先鋒と見られているからだ。
つまり、Amazonの脅威にさらされている流通業者にとっては、デジタル変革を推進するパートナーとしてMicrosoftに頼る構図ができ上がりつつあるのだ。藤井氏の発言は、そうした米国での“追い風”を日本でも吹かせたいとの思惑によるものである。
そう考えていくと、Microsoftはデジタル変革をテコに、Amazonと競合する流通業者を支える存在として、Amazon Web Services(AWS)だけでなくAmazon.comの対立軸になり得るかもしれない。それは日本でもしかりである。だからこそ、象徴的な事例になるパートナーがどこなのかが気になるところだ。
会見終了後、藤井氏へのぶら下がり取材で幾つかの具体名を出して探りを入れてみたが、やはり「言えない」の一点張りだった。ただ、「実際に進行中」なのは確かなようだ。果たして、対立構図にどれほどのインパクトを及ぼすものになるか。その名が公表されるのを注視して待ちたい。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- 転送が遅い、保守が煩雑、コストがかかる――クラウド移行の課題、ハイブリッドクラウドなら解決できるのか
オンプレミスとクラウドの両環境を利用するハイブリッドクラウドに対する企業ニーズが高まる中、Microsoftが「真のハイブリッドクラウドを実現できるのは当社だけだ」と説く。果たして、どういうことか。 - 「NEC 365」にみるマイクロソフトの新しいパートナー協業形態
NECとMicrosoftが「Microsoft 365」の利用を促進する新サービス「NEC 365」を共同開発し、販売を開始した。この動きに、Microsoftの新しいパートナー協業形態が見て取れる。 - 日本のNo.1クラウドベンダーになる――2020年を見据えた日本マイクロソフトのクラウド戦略とは
日本マイクロソフトの平野拓也社長は、2019年度の経営方針説明会で、クラウド事業で2020年に国内首位を目指すと宣言。インダストリー、ワークスタイル、ライフスタイルの3分野をイノベーションの注力チャネルに据えた新たなクラウド戦略とは。 - 金融・流通は約30%がデジタル革新の成果を創出、成功要因は6要素――富士通のグローバル調査
富士通の調査によると、デジタル革新は具体的なビジネス成果を生み出すフェーズに移行しており、金融・流通は約30%が既にデジタル革新の成果を創出していた。デジタル革新の成功要因は「リーダーシップ、人材、エコシステム」など、6つの要素があることが判明した。 - Google、Microsoftに続いてAmazonも プラットフォーマーがプロセッサ開発を手掛けるわけ
Google、Microsoftに続き、Amazonも独自開発のプロセッサ「AWS Graviton」と「AWS Inferentia」を発表しました。プラットフォーマーが自社でプロセッサを開発するメリットは、どこにあるのでしょうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.