NTTがグループを挙げてRPA事業に注力する理由:Weekly Memo(2/2 ページ)
NTTがグループを挙げてRPA事業に注力し始めた。RPA市場が活発化していることもあるが、同社の狙いはそれだけではないようだ。
WinActorをトリガーに「全社横断DX」の支援事業を推進
では、WinActorはどんなユーザーにどのように使われているのか。島田氏は、「企業および自治体のあらゆるバリューチェーンで活用されている」と説明した。具体的には図3に示すように、企業ならばR&D(研究開発)から保守運用まで、自治体ならば住民情報から情報公開に至るまでのプロセス全てに適用されているという。とくに自治体に広く使われているところが、NTTグループならではの成せる業といった印象だ。
島田氏は、WinActorの進化についても、縦軸に企業規模、横軸に組織の広がりを描いた図4を示しながら、3つのポイントを挙げた。
1つ目は、多言語化。英語、そして中国語にも対応しており、今では日系が中心ながらも海外10カ国ほどの企業で使われているという。2つ目は、利用形態。先述したようにオンプレミスでもクラウドでも使用可能だ。3つ目は、従量課金型のクラウドサービスとしても利用できるようになったことである。
さて、これまではWinActorそのものの話だったが、あらためてNTTグループはなぜWinActorに注力するのか。その理由は、有望なRPA市場で以前から存在感を示してきたWinActorをさらに普及拡大させていきたいとの思惑とともに、NTTグループならではの野望があるようだ。
それは、「WinActorをトリガーに全社を横断するデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する事業へと広げていく」(島田氏)ことだ。
その内容を示したのが、図5である。同氏によると、NTTグループではRPAの他、アナログからデジタルへ変換するAI-OCRや音声の自動テキスト化を行うツール、デジタル処理を行うPCログ分析やチャットbotなどのツールを提供している。これらを顧客ニーズに合わせて組み合わせながら、WinActorをトリガーに「全社横断DX」の支援事業を推進していこうというわけだ。
さらに、こうしたRPA事業戦略がNTTグループを挙げての取り組みであることも注目される。というのは、NTTグループは今、大掛かりな再編の真っ最中だからだ。
まずは海外事業の強化を目的に2019年7月から新たな体制になったが、今後注目されるのは国内事業の再編だ。とりわけ、NTT東日本とNTT西日本のいわゆる東西会社について、固定電話の契約減少が続く中でどのような事業転換を図っていくか。地域に密着したDX支援事業がキーになるというのが、筆者の見立てだ。
そこで、今回の会見の質疑応答で「RPA事業は東西会社も推進していくのか」と聞いたところ、島田氏は「東西会社もすでに手掛け始めている。それぞれのお客さまのご要望を踏まえて対応していく」と答えた。その意味では、これまでWinActorの営業主体だったNTTデータと東西会社が今後、どのような連携スタイルになるのかも気になるところだ。
NTTグループの今回の取り組みは、こうしたさまざまな観点で注視しておきたい。
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