2020年、5Gが企業のDXを加速させる:Weekly Memo(2/2 ページ)
2020年は「5Gが企業のDXを加速させる年」になりそうだ。その理由や市場の広がりと、懸念される点についても考察してみる。
懸念は「データ保護」と「自らを変えていく姿勢」
JEITAは「ローカル5G」にも言及した。5Gは図3に示すように、パブリックエリアで通信事業者の公衆網に接続する「WAN5G」と、クローズドな空間でプライベートに利用できる「ローカル5G」の2つがある。このうち、特に新たな市場創出の期待を集めているのが、ローカル5Gである。
ローカル5Gは、高度なセキュリティで機密情報を保護できることや通信の安定性も高いという特性から、これまで無線化が進んでいなかった工場や農場、建設現場やイベント会場、病院などで導入が見込まれている。
ローカル5G市場の世界需要額の見通しは年平均65.0%増で成長し、2030年には10兆8000億円に拡大。日本では2030年に1兆3000億円になるとしている。図4はその内訳を示したグラフで、IoT機器ではロボットやドローン、自動運転車が需要をけん引。ソリューションサービスとしては、製造分野向けが需要をけん引すると予測している。
JEITAの発表会見では、遠藤信博会長(NEC会長)が説明に立った。日本において5Gサービスが間もなく本格的にスタートすることから、「あらゆるものがネットワークでつながる世界の実現が、目前に迫ってきた」との同氏の臨場感を込めたコメントが印象的だった。
一方、5Gについて懸念される点も2つ挙げておこう。
1つはデータ保護である。5Gは高度なデータ保護機能を備えているとされるが、IoT機器から収集されるデータがビジネスにおいて重要な役割を担うようになり「データの価値が高まれば高まるほど、サイバー犯罪者にとってはより魅力的なターゲットになる」(セキュリティソフトベンダー首脳)ことは間違いない。これまで以上に十分な対策が求められるのは言うまでもない。
もう1つは5Gをビジネスチャンスにする姿勢である。5Gはあらゆる産業および企業のDXを加速するというのが筆者の予測だが、その前提として「5Gで変わることを受け入れるのではなく、5Gによって自らを変えていく」との姿勢が求められるということだ。
5Gによって自らを変えていく姿勢とはどういうことか。技術的な観点でいえば、IoTやAI、コンピューティングの在り方も5Gに合わせてアップグレードしていく必要があるということだ。
例えば5GによるIoT活用の分野では、コンピューティングとしてクラウドだけでなくデータの発生場所に近いところで処理を行う「エッジ」の領域が重要な役割を担うようになってくる。このエッジコンピューティングをどのように実現するのか。こうした総体的な考え方が必要になってくるわけだ。
データ保護と自ら変えていく姿勢を踏まえた上で、あなたの会社でも5Gを活用してDXに勢いをつけてほしい。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- 2019年を総括する4つのキーワード「DX」「ハイブリッドクラウド」「シェアリングサービス」「データ保護」を解説しよう
今回は年内最後のWeekly Memoなので、2019年のエンタープライズ/コマーシャルIT市場において印象に残ったトレンドとして4つのキーワードを挙げ、その理由やポイントを述べたい。 - SAPジャパンが示すDX支援「エコシステム」型協創は定着するか――SAPジャパン福田譲社長に2020年の展望を聞く
今やIT業界のご意見番的存在でもあるSAPジャパンの福田譲社長に、「2019年の印象と2020年の展望」をテーマに話を聞いた。すると、DXの極意は「エコシステム」にあるとのこと。果たして、どういうことか。 - 「令和」に改めて問う、あなたの会社が使っているクラウドはビジネスの競争力を高めているか?
企業のITシステムはなぜクラウド化すべきなのか。そして、どう進めればよいか。これまで幾度となく論議されてきたこれらの問題を、ガートナーの名物アナリストである亦賀忠明氏の話を基に、あらためて考察したい。 - 三越伊勢丹、ユニ・チャームが年頭所感で示した「2019年のデジタル変革」
2019年は、企業にとって、デジタル変革への取り組みがますます重要になる。そこで、ITベンダーではなく、ユーザー企業あるいは団体の年頭所感から、その意思を探ってみたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.