「RPA」はエンタープライズアーキテクチャにおいて“ナニモノ”か:Weekly Memo(2/2 ページ)
定型業務を自動化するRPAが日本企業で幅広く使われるようになってきた。その現状と今後の方向性について、最新の調査やキーパーソンの発言から探ってみたい。
RPAはエンタープライズアーキテクチャの新領域になるか
一方、ガートナー ジャパンも先頃、企業におけるRPAの推進状況に関する調査結果を発表した。同調査は2019年5月に、全国の従業員数20人以上のユーザー企業のシステム管理者、購買責任者を対象に実施。715社から回答を得た。
この調査は、自社のRPAの推進体制に適するものを3つの選択肢から選ぶよう求めた結果、最も多かったのが「IT部門が取りまとめ、全社で推進体制を標準化」の67%であり、「各部署の判断で個別に対応」(21%)、「ツールや研修は全社で標準化、推進は各部署が対応」(12%)が続いた。(図4)
ガートナー ジャパンによると、この結果で注目すべきは「IT部門が取りまとめ、全社で推進体制を標準化」と回答した企業が6割を超えた点だという。これまで日本のRPAの導入では、ユーザー部門が自部門の業務効率化を目的として自発的に検討を始め、IT部門を介さずRPAを採用するケースが多く、現在でもこのパターンは珍しくない。IT部門が導入当初から積極的に関わるのはむしろまれで、個別部門によるRPA導入を後になって知ることが頻繁にあったという。
ガートナージャパンのアナリストでシニアディレクターを務める阿部恵史氏は「こうした結果が出た理由としては、個々の部門によるRPA導入後、一定の成果を上げた段階からRPAの適用範囲の全社的な拡大を志向する段階へ移った企業が増えていることが考えられる。RPAの利用を全社レベルで拡大するにはIT統制の観点から、RPAツールの技術的な機能評価、IT統制のプロセスや仕組みづくり、各種の標準化やガイドラインの策定が必要となる。そのため、ユーザー部門が単独で取り組みを進めるのは困難であり、IT部門の関与が必須となるからだ」と分析している。
ではRPAは今後、どのような方向に行くのか。その観点で、筆者が注目しているのが、エンタープライズアーキテクチャにおけるITの階層でRPAがどのような位置付けとなって存在感を発揮するのかである。アプリケーションを支えるミドルウェアの一つなのか、それともRPAという新しい領域がエンタープライズITに新たなイノベーションを起こすほどのものになるのか。
この疑問を、UiPath日本法人の最高売上責任者(CRO:Chief Revenue Officer)を務める鈴木正敏氏に、同社が先頃開いた新製品発表会見の際にぶつけてみた。すると、同氏は次のように答えた。
「RPAは新しいテクノロジーであり、従来のエンタープライズアーキテクチャにはない新しいポジションを切り開いていくものだと確信している。企業の基幹業務システムをこれから刷新する際にも、これまで業務の流れの中で残っていた手作業をRPAで巻き取れる領域はまだまだたくさんあると見ている。その意味では、エンタープライズアーキテクチャの標準化や自動化に向けた『ラストワンマイル』を埋めるのが、RPAの役割だと考えている」(鈴木氏)
エンタープライズアーキテクチャにおいてRPAは“ナニモノ”か。筆者のこの質問に鈴木氏は的確に答えてくれた。RPAは本当にそのような存在になっていくのか、大いに注目していきたい。
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