経営力を高めよ、コロナ禍で企業に求められる「BCPの先」:Weekly Memo(1/2 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業がテレワークをはじめとして事業継続のための対策に追われている。この話になると、事業継続計画を意味する「BCP」の取り組みが注目されるが、経営者にとって本当に大事なのは「BCPの先」である。
大手企業では3分の2が「BCP策定済み」
BCP(事業継続計画)は、多くの企業で東日本大震災を契機に取り組みが始まった。あらためてBCPの定義を記しておくと、「大地震などの自然災害、感染症のまん延、テロなどの事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化などの不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順などを示した計画」のことだ。内閣府の「事業継続ガイドライン」から引いた。
では、企業におけるBCPの策定率は今、どれくらいなのか。東京海上日動リスクコンサルティングが先頃発表した調査結果によると、で「策定済み」が64.2%だった。(調査期間は2019年7〜8月 従業員数2000人以上の企業215社が回答)調査期間は今回のコロナ騒動の前になるが、およそ3分の2の企業がBCPを適用できる状態だったといえる。ただ、中堅中小企業におけるBCP策定率は、直近のデータはないが、これまでの推移から3分の1以下にとどまるとみられる。(図1)
そうした状態のところへ、今回のパンデミック(感染症の世界的大流行)が起きた。事業を継続するためにテレワークを導入する企業が相次いでいるが、BCPを策定していないところはもちろん、策定していてもドタバタとスタートさせたところが少なくなかったようだ。
振り返ってみると、東日本大震災のときも、大手企業では3分の1ほどがBCPを策定済みだったが、経営者の発動の遅れや現場への代替手順の周知不足、訓練不足による実効性検証の欠如などの理由から、計画通りに事業を継続できなかった企業が多数見受けられた。
手前みそながら、当時は筆者もBCPをテーマに相当数のユーザーやベンダー、コンサルティング会社を取材し、有事の際のリスクマネジメントについて探り続けた。その1つとして本連載でも2011年4月11日掲載の「震災から学ぶ事業継続の勘所」と題した記事があるので参照していただきたい。ちなみに、この記事の掲載日は震災からちょうど1カ月後である。
また、今回のいわゆる「コロナ禍」においては、テレワークへの移行だけを見てもさまざまな課題が出てきている。それらはテレワークを実行できるセキュアなICT環境の確保にとどまらない。例えば、勤怠や業績の管理、生産性をどう上げてビジネス拡大を図っていくかといったマネジメント面も課題となる。そうした課題にどう取り組めばよいのか。それがBCPの先にある「BCM(事業継続マネジメント)」である。
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