経営力を高めよ、コロナ禍で企業に求められる「BCPの先」:Weekly Memo(2/2 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業がテレワークをはじめとして事業継続のための対策に追われている。この話になると、事業継続計画を意味する「BCP」の取り組みが注目されるが、経営者にとって本当に大事なのは「BCPの先」である。
BCMで事業継続の取り組みにPDCAを回せ
BCMは「BCP策定や維持、更新に加えて事業継続を実現するための予算および資源、事前対策の実施、取り組みを浸透させるための教育や訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動」のことである。BCPと同じく内閣府の事業継続ガイドラインを参考にした。
実は、BCMもBCPと同様、震災後から注目されてきた。ただし、BCPの多岐にわたる内容を定期的にチェックするには相応のリソースが必要なことから、BCMの実施には二の足を踏む企業が多かった。そこで、最初から完璧なものを目指さずできることから始め、その後の継続的改善によって徐々に事業継続能力を向上させていくことを、同ガイドラインは推奨している。(図2)
BCMは単なる計画ではなく継続的な取り組みであり、企業全体のマネジメントとして継続的かつ体系的に取り組むことが重要だ。その手法として有効なのが、マネジメントサイクルのPDCA(Plan-Do-Check-Action)である。
ちなみに、ガイドラインによるとBCMでは、「不測の事態において事業を継続する仕組み」「社内の事業継続に関する意識の浸透」「従業員の能力を評価・改善する取り組み」の3つが重要なポイントで、どれか1つでも不十分ならば効果は限定的になる可能性が高いとしている。
また、BCMをテレワークに適用するならば、ガートナージャパンが先頃発表した「テレワークの本格化に向けて注意すべきポイント」を参照していただきたい。このレポートで挙がっている「資料が自宅から閲覧できない」「ビデオ会議の品質が安定しない」「コラボレーションツールの使い方が分からない」「勤務時間を正確に把握できない」などのポイントは、テレワークにおけるBCMの重要な課題である。
同社のアナリストでバイスプレジデントの志賀 嘉津士氏はこれらの課題について、「一朝一夕に解決できるものではなく、長期的に取り組む覚悟が必要だ。テレワークは今回の感染症対策だけでなく、さまざまな災害時における事業継続の観点からも必要であり、これを契機に取り組みをより強固なものへと深化させていくべきだ」と述べている。
最後に強調しておきたいのは、BCPの策定もさることながら、BCMの取り組みは経営者の責任であり、平常時も有事にもリーダーシップを発揮し、率先して行動すべきであるということだ。BCPやBCMといえば有事の際の取り組みと受け取られがちだが、目指すのは平常時も有事も変わらぬ体制を築くことである。そのためには、自社の経営理念やビジョンと照らし合わせた形でBCMの基本方針を打ち出すべきである。
そう考えると、経営者にとってBCMの実践は、自らの経営力を高める好機である。その意味で、現在のコロナ禍でのテレワークの推進は、スタートはドタバタしたとしても、BCMを実践する格好の機会である。経営者にはぜひ「ピンチはチャンス」と思って取り組んでいただきたい。
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