シリコンバレーの投資家が注目する「アフターコロナ時代の技術トレンドとビジネスモデル」とは:Weekly Memo(2/2 ページ)
アフターコロナ時代の技術トレンドとビジネスモデルは、これまでとどう変わるか。多くの急成長企業を支えてきた実績を持つ米国シリコンバレーの投資家が、このテーマについて講演した。その中から筆者が印象深かった話を取り上げたい。
宅配サービスやeラーニングの分野で注目の企業とは
3社目は、宅配サービス分野から買い物代行サービスを提供するInstacart(インスタカート)だ。ユーザーが食料品や生鮮品など宅配アプリで注文した品物を、同社のサービスに登録した代行人が店舗から回収し、ユーザーの家に届ける仕組みだ。Instacartは多種多様な小売店と提携し、複数の店舗から購入できる。そのため顧客の評価は高いという。このサービスは、リアルな店舗と連携したAmazon.comの対抗策として規模が一層大きくなっていく可能性もありそうだ。(図3)
4社目は、eラーニング分野で急速に知名度を上げつつあるOutschool(アウトスクール)だ。幼児から高校生まで、幅広い年齢を対象にさまざまなジャンルの教育コンテンツを提供する。対面のオンライン学習ではなく、バーチャル空間に「教室」を作った学習にこだわっているという。24時間使用される教室では、当該科目の教師がライブで授業を実施し、生徒と教師がその場でやりとりできる。(図4)
なぜ、24時間にわたって教師がライブで授業できるのか。それは世界の時差を利用して、さまざまな国から同じ科目を担当する教師が出てきて授業を実施する仕組みになっているからだ。ウッザマン氏は「この仕組みがeラーニングのグローバルプラットフォームになるかもしれない」と語った。もし本当にうまく運営できれば、可能性はある。筆者もこの仕組みの発想には驚いた。
5社目は、多彩な事業を手掛ける起業家のイーロン・マスク氏がロケット打ち上げなどの宇宙開発事業として推進するSpaceX(スペースX)だ。2020年5月に民間企業として有人宇宙船の打ち上げに初めて成功したことでも話題を呼んだ。
ウッザマン氏はSpaceXについて「投資している中でも最も注目度の高い企業だ」と話す。ただし、同氏が熱い視線を送っているのはロケットではなく、次世代インターネットといわれる「Starlink」だ。これは、1万2000個の衛星を3年後までに地球の軌道に投入することで現在の20倍以上の高速インターネットを実現しようとする事業だ。しかも、現在インターネット回線として使われている光ファイバーより、総投資額を大幅に抑えられるという。(図5)
同氏は「Starlinkが整備されれば、地球全体が無線でメッシュ状につながれ、どこにいても5G(次世代移動体通信規格)が容易に使えるようになる」と話す。そうなれば、インターネットの新たな用途がどんどん創出されるだろう。さらに、SpaceXはStarlinkの衛星について、1万2000個に加えて3万個を投入する計画を米国当局に申請中だとか。そうなれば、Starlinkこそがインターネットと呼ばれるようになるかもしれない。
最後に、読者の皆さんにクイズを1つ。インターネット回線において世界をつなぐ光ファイバーの海底ケーブルに最も投資している企業はどこか。そして、Starlinkを推進するSpaceXに最も投資している企業はどこか。ヒントは「両方とも同じ企業」だ。
講演では、以上のような話を楽しそうに話すウッザマン氏の姿がとても印象的だった。
さて、上記の質問の答えは「Google」。同社の先見性もあらためて思い知らされたエピソードだった。
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