企業はDXに向けて「顧客の声」をどう生かすべきか――富士通の挑戦:Weekly Memo(2/2 ページ)
DXによってビジネス変革を推進する際、顧客の声をどう生かしていくか。この重要なテーマに、富士通が最新ツールを使って挑んでいる。興味深い内容なので取り上げて考察したい。
経営陣もCX改善を自らの取り組みとして尽力することが重要
富士通はグローバルNPS調査を具体的にどのように進めたのか。それを示したのが図4だ。山本氏によると、ポイントは、国内外の部門や地域から事業責任者クラスの17人を、それぞれの現場の指揮を執る「CXリーダー」としてアサインし、マーケティング部門と連携しながら、現場で顧客の声を収集、分析し、アクションを起こして継続的に改善していくサイクル「フィードバックループ」を回していくことだ。
同氏はさらに、「お客さまの声を生かすために注意すべきなのは、それぞれの地域での文化の違い、当社とお客さまとの関係の深さの違い、富士通ブランドの認知度の違いなどを踏まえた上で、共通の指標として見ていけるようにすることだ。調査の品質を上げていくための取り組みは、それぞれの現場でお客さまのことを熟知したCXリーダーがいないと難しい」とも指摘した。
VOICEプログラムは、これまで見てきたように、全社DXに取り組む富士通のような企業にとっては効果的な仕組みだと受け取れる。一方で、CEOをはじめとした経営サイドはどのように関与しているのか。
それを示したのが図5だ。経営サイドはCXリーダーを通じてさまざまな提言を受ける「CXステアリングボード」のメンバーとなり、全社的な立場でCX改善をリードしていく。ポイントは、「経営サイドもCX改善を自らの取り組みとして、具体的なアクションにつなげるように尽力する」(山本氏)ことだ。
同氏によると、四半期ごとに行われる予定のこのボード会議の第1回が2020年12月上旬に開かれ、富士通グローバルの経営陣がオンラインで一堂に集まり、DX改善にテーマを絞って真剣な議論を交わしたという。これだけを見ても、同社が全社DXに真剣に取り組んでいることが分かる。
とはいえ、富士通の全社DXプロジェクトにおいて、VOICEによる顧客の声をCX改善に生かす仕組みの活用は、まだ始まったばかりだ。現段階での顧客からのフィードバックとして、山本氏は「製品やサービスへの安心感、信頼性のある技術力に関しては高く評価していただいている。また、DXに関する提案にも期待が高まっているのを実感している」と話した。そして、説明の最後に出たのが、冒頭で紹介した「もっと顧客中心の企業文化を浸透させていきたい」との発言である。
さて、あなたの会社はどのように顧客の声を集め、分析し、ビジネスに生かしているか。昔からある普遍的なテーマだが、ここにこそDXのきっかけがあるのではないか。山本氏の話を聞いて、筆者はそう強く感じた。
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