日本のDXはなぜ“受け身”になりやすい? グローバルと差を生む「CX」という視点:Weekly Memo(1/2 ページ)
日本企業が取り組むDXはもっとCXに注力すべきではないか。グローバルと比較した最近の調査結果から、そんな課題が浮き彫りになってきた。何をどうすればよいのか考察したい。
日本企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)は、もっとカスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験)に注力すべきではないか。さまざまな角度からDXの取材をしてきた中で、筆者は最近、こんな懸念を抱いていた。DXに取り組む日本企業からCX向上への具体的な施策を聞けるケースが、まだ少ないからだ。
そう感じていたところへ、懸念を裏付けるような調査結果がIDC Japanと電子情報技術産業協会(JEITA)から相次いで発表されたので、その内容を紹介しつつ、日本企業の課題を考察したい。
最近の調査結果から「日本企業のDXが内向きな理由」とは
IDC Japanが2020年12月22日に発表した「DX動向調査 国内と世界の比較結果」(関連記事)は、図1に示すように、日本を含む全世界の企業で、DXの適用業務のうち「IT/情報システム」と「業務オペレーション」「戦略策定」「マーケティング」の項目が、どの調査結果を見ても比較的高い状況であることが分かった。
一方で「顧客エクスペリエンス」(CX)については、国内企業の回答比率が世界と比較して低く、15ポイント以上の差がある結果となった。
IDC Japanはこの点について「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を経て、企業と顧客とのエンゲージメントがよりバーチャルなものになっていくに従い、国内企業においてもその中でいかに顧客エクスペリエンスを高め、顧客1人当たりのライフタイムバリューを高めていくか、といったことが最重視されるようになる」との見方を示している。
図1の業務項目を見ると「顧客エクスペリエンス」は他と少し意味合いが異なるようにも見えるので、日本企業の回答者はピンと来なかったのかもしれない。とはいえ、それでもこれほどの差がつく点は、やはり大きな問題として捉える必要があるだろう。この調査結果が、本稿を書くきっかけになった。
なぜ、日本と世界の企業でDXの取り組みにおけるCXの割合に大きな差があるのか。それを理解するカギが、JEITAが2021年1月12日に発表した「日米企業のDXに関する調査結果」から見えてくる。
図2に示した「DXの目的」を日米企業で比べると、米国企業は「新規事業/自社の取り組みの外販化」などの事業拡大に置くのに対し、日本企業は「業務オペレーションの改善や変革」といった既存業務の収益改善に置く傾向があり、日米のスタンスに違いが見られた。こうした状況から、JEITAは「日本企業は従来のIT投資の延長上でDXを捉えている面がある」との見方も示している。
この結果をCXの観点から見れば、目的の主軸は事業拡大にある。従って、内向き指向の日本企業と外向き指向の米国企業では、差が出てくるのは当然といえる。
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