全拠点クラウドERPに移行へ I-PEX、10年越しの全社デジタル化とクラウドシフト
最終的にはERPもパブリッククラウドで運用を――。国内外にグループ会社を抱えるI-PEXが選択したクラウドERPまでの現実的な移行ステップは。
大手企業を中心に広く導入されているSAP ERPのクラウド移行が進む。SAP ERPのユーザー企業であるI-PEX(旧・第一精工)もその1社だ。2022年初頭の稼働を目指し、既存ERPの「SAP S/4HANA」への移行を進める。
グループ全社へのERP導入、MES連携の実現と10年がかりでデジタル化を進めてきた同社が、将来像として描くのは完全なクラウドシフトだ。だが、一度に全てをクラウドに移行することは考えていないという。今後どのようなステップを経てクラウドシフトを目指すのか。SAPジャパンによる記者説明会で同社の取り組みを聞いた。
全社ERP導入から10年をかけて組織全体のデジタル化を推進
I-PEXのルーツは1963年に京都で創業した第一精工だ。精密金型から始まり、現在は電子機器用コネクターを主に取り扱う。2020年8月に主力コネクター製品のブランド名「I-PEX」に合わせて社名を変更した。現在、国内4社、海外17社をのグループ会社、連結で5343人の従業員を抱える(2020年12月31日時点)。
同社のSAP ERPの利用は2008年にさかのぼる。この時の全社ERP導入をきっかけに、約10年にわたり組織全体のデジタル化を推進してきたという。
製造業向けのITに強い三菱電機インフォメーションシステムズの支援を受けて導入を進め、2年後の2010年には全拠点でシングルインスタンス(単一サーバ)でのERP導入を完了した。合わせて、データの一元化を推進するのと同時に、データを使ったリスク予測の高度化を進めた。
同社常務取締役 技術開発本部長の緒方健司氏は次のように説明する。
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