富士通、NEC、NTTデータの最新受注状況から探る「国内IT需要の行方」:Weekly Memo(2/2 ページ)
今後の国内IT需要はどう動くか。富士通やNEC、NTTデータのITサービス大手3社の最新受注状況から探る。
「ITサービスの需要は引き続き堅調に推移」(NEC)
NECが2023年7月28日に発表したITサービスにおける第1四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比2%増だった。事業分野別では「エンタープライズ」が同16%増、「パブリック」が同6%増と伸長したが、「その他」が同14%減だったため、国内全体では2%の伸びとなった。エンタープライズの業種別内訳としては、「金融」が同37%増、「流通・サービス」が同9%増と伸びたが、「製造」が同1%減にとどまった(表2)。
この受注状況について、同社の藤川 修氏(代表執行役 Corporate EVP 兼 CFO)はオンライン会見で次のように説明した。
「国内のその他が減少したのは、消防・防災システムの更新需要を控えて少額にとどまったためだ。エンタープライズおよびパブリックは旺盛な需要を取り込んで好調を維持している。業種別に見ると、金融は大型案件を獲得したこともあって大きく伸長した。大型案件を除いても金融は二桁成長と好調に推移している。流通・サービスは主にサービス向けに案件が増加した。製造は微減となったが、ここ2年の同期比で5%ずつ増加してきており、その水準を維持しているということで堅調に推移していると捉えている。パブリックでは官公庁向けが好調に推移した」
また、今後の需要については、「SI(システムインテグレーション)の受注や稼働率などの動きを見ても、ここしばらく前年同月に比べてプラス基調で推移しており、この傾向には今のところ全く陰りを感じていない。SIをはじめとしたITサービスの需要は引き続き堅調に推移するだろう」との見方を示した。
「企業のIT投資は拡大傾向にある」(NTTデータ)
NTTデータグループが2023年8月8日に発表したITサービスにおける第1四半期の国内受注状況は、業種別に見ると、「金融」が前年同期比48.6%増の1278億円、「公共・社会基盤」が同17.8%増の1645億円と大きく伸長したが、「法人」は同3.4%減の828億円にとどまった。同社は2023年7月から持ち株会社のNTTデータグループの下で、国内事業会社のNTTデータと海外事業会社のNTT DATA, Inc.が活動する形となった。海外事業会社にはこれまでのNTTグループの海外事業が集約された。これにより、NTTデータグループとしては海外での売上比率が約6割、従業員の海外比率が約8割となった(表3)。
NTTデータグループで2023年6月から財務・IRの責任者を務める中山和彦氏(副社長執行役員)は、今回発表の受注状況について次のように説明した。
「国内では、金融で地域金融機関向け案件、公共・社会基盤で中央府省向け大型案件を獲得して大きく伸長した。法人は減少したが、これは前年同期に獲得した小売・消費財向け案件受注の反動によるものだ」
また、今後の需要については「法人についてはコロナ禍で厳しい状況が続いていた分野もあったが、ここにきてコロナ禍前の需要に徐々に戻りつつあるとの感触がある。企業のIT投資は拡大傾向にあるので、お客さまのニーズにしっかりと応えていきたい」(NTTデータグループ 執行役員コーポレート統括本部長の西村忠興氏)との見方を示した。
以上が、直近の四半期決算における3社のITサービスにおける国内受注状況と、それを踏まえた国内IT需要の行方だ。
「デマンドは今後もしばらく強い状態が続く」(富士通)、「ITサービスの需要は引き続き堅調に推移」(NEC)、「企業のIT投資は拡大傾向にある」(NTTデータ)といったように、3社とも今後の国内IT需要についての見通しは明るいようだ。
さらに、このところの取材を通じて強く感じる企業ニーズは、生成AIの業務活用だ。具体的な取り組みを2023年7月6日に発表したNECは「生成AIに関連したソリューションニーズは非常に大きい」(藤川氏)と強調していた。生成AIの業務活用はIT需要の拡大に拍車をかけるものになりそうだ。
一方で、米中対立の激化やロシアによるウクライナ侵攻に続く戦争の長期化といった不安定な国際情勢に伴う経済の悪化、サプライチェーン分断への懸念など、国内景気が今後、後退局面に向かう可能性もある。国内IT需要の好調ぶりに油断することなく、グローバル経済の動きも注視したいところだ。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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