サステナビリティと経済成長は両立するか――シスコの取り組みから考察する:Weekly Memo(1/2 ページ)
サステナビリティに取り組む企業が増えている。サステナビリティの推進と経済成長は相反する動きにも見えるが、果たして両立するのか。シスコの取り組みから考察する。
サステナビリティの取り組みが重要なことは分かっているが、人間社会がこれまで継続してきた経済成長と果たして両立できるのか――これが、今回のテーマだ。
経済成長は「ビジネス」と置き換えてもいいだろう。サステナビリティについては、企業個々の取り組みも注目されるようになり、デジタル技術によるソリューションを企業に提供するITベンダーの動きも活発化している。
シスコのサステナビリティ戦略とは
だが、筆者はかねて「サステナビリティと経済成長(ビジネス)は二律背反の関係ではないか」との疑問を持ち、サステナビリティに取り組む企業や行政、そしてサステナビリティ事業を進めるITベンダーの取材を重ねてきた。そんな折り、シスコシステムズがサステナビリティの取り組みについて記者説明会を開催したので、今回は上記のテーマについて考察したい。
改めて、サステナビリティとは環境や社会、経済などにおいて持続可能性を重視した発展を目指す考え方や取り組み意味する。「SX」(サステナビリティトランスフォーメーション)という言葉が使われることも多くなった。SXとは、持続可能性により良いインパクトを与えるために、企業や行政などによるさまざまな変革の活動を指す場合が多い。そして、SXを推進していくために欠かせないのがデジタル技術であり、DX(デジタルトランスフォーメーション)だ。
そんなサステナビリティ事業を展開するITベンダー大手のシスコシステムズが2023年8月8日、「シスコのサステナビリティ戦略」と題して記者説明会を開き、同社の中川いち朗氏(社長)とサステナビリティ事業を担当する高橋敦氏(執行役員)がオンラインで会見に臨んだ。
中川氏は冒頭で「サステナビリティはシスコが自らのパーパスである『すべての人にインクルーシブな未来を実現する』ための最重要戦略と位置付けている。2022年8月には初代のCSO(最高サステナビリティ責任者)を任命し、グローバルで全社的な取り組みを推進している」と述べ、同社のサステナビリティへの力の入れようを強調した。
具体的な取り組みとしては、とりわけ環境面で「2040年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出を実質ゼロにする」との目標を掲げている。これは、日本をはじめ多くの国が目標として掲げている2050年を10年前倒しした形だ。
そして、この目標を達成するため、「再生可能エネルギーの利用促進」「気候変動対策への投資」「ハイブリッドワークの推進」といった自社内での取り組みとともに、事業として「サステナビリティ対応ソリューション」「サーキュラーエコノミー(循環型経済)促進プログラム」を展開している(図1)。
その中でも事業の中心となるサステナビリティ対応ソリューションでは、「サステナブルデータセンター」「スマートビルディングワークスペース」「未来のインターネット」と名付けたサービスを提供。これらを組み合わせた「産業別・業種別ソリューション」や個々の顧客に伴走する「サステナビリティ支援サービス」も整備している(図2)。こうしたシスコのサステナビリティへの取り組みの詳細については発表資料を参照していただきたい。
さらに、同社はこの会見を行った同日付で、顧客に向けたサステナビリティの総合支援窓口となる「サステナビリティ推進支援センター」の開発も発表した。
以上がシスコの会見内容の概要だ。質疑応答で上記の今回のテーマ「サステナビリティと経済成長は両立するか」について聞いてみた。
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