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業務外注サービスはAIでどう変わる? NTT Comとトランスコスモスの提携に見る「BPOの進化」Weekly Memo(2/2 ページ)

AIをはじめとした最新のデジタル技術でさらに進化を遂げようとしている「BPO」。NTT Comとトランスコスモスの戦略的事業提携から、その最新の動きを探る。

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プロセス重視の考え方がDXのベースに

 それぞれの取り組みについて、もう少し説明しておこう。

 次世代コンタクトセンターの開発については、コンタクトセンターの業務効率化および顧客接点の高度化を目的に、tsuzumiを活用したセキュアなAIコンタクトセンターを開発する。tsuzumiの特徴である超軽量なパラメータサイズを生かし、専門的な内容や各社特有の内容を学習させることで回答精度を向上させる。オンプレミス環境やNTTグループのプライベートクラウドで利用できるため、個人情報や機密情報の取り扱いなど高いセキュリティを確保できる。さらにtsuzumiを活用したAI自動応対サービスを展開し、要望に応じた最適な回答提示や自動化により、顧客企業のCX(カスタマーエクペリエンス)向上にも貢献するとしている(図4)。


図4 次世代コンタクトセンター開発の取り組み内容(出典:NTT Comとトランスコスモスの提携発表会見資料)

 GXソリューションの提供については、温室効果ガス(GHG)の排出量について算定ロジックの定義やデータを収集、分析、可視化して、削減に向けたアクション提案などをワンストップで提供する。データ収集から可視化までを自動化することで、人手をかけずに「サービスの購入金額や物量」「排出係数」「温室効果ガス排出量」などのデータを生成できるという。

 自治体DXソリューションの提供については、自治体のDX推進に向け、NTT Comの地域事業者向け運用管理システム「Local Government Platform」とトランスコスモスのSNSを活用した住民コミュニケーションサービスおよびBPOサービスを両社からワンストップで提供する。自治体における職員やデジタル人材の不足を解決し、暮らしやすく魅力ある地域づくりを支援するとしている。

 両社は今回の事業提携により、今後5年間で1000億円のビジネス規模を目指す構えだ。この取り組みの延長線上で両社がビジネスを大きく広げていこうとしているのが、Digital BPOである(図5)。


図5 今後の展開(出典:NTT Comとトランスコスモスの提携発表会見資料)

 従来のBPOとDigital BPOのような「デジタル技術を活用したBPO」は別のものなのか、それとも従来のBPOもDXにシフトするのか。会見の質疑応答で聞いてみたところ、両氏とも「従来のBPOもDigital BPOにシフトしていく」との回答だった。

 最後に、筆者がBPOに注目する理由を述べておきたい。端的にいえば、BPOのベースにあるプロセス指向の考え方が、DXを進める上で重要だと考えるからだ。

 BPOおよびプロセス指向の考え方について筆者は、BPOのメリットとして自社の競争力の中核となる重要な業務に人材や資源を集中できる他、中核でない業務に固定的に張り付いていえう人員や設備などにかかる費用を変動費化し、企業規模や業績に応じて柔軟にコントロールできることにあると理解している。

 BPOを利用する際はまず、委託先がどこかにかかわらず、「業務の切り出し」という作業が重要になる。どの業務が切り出せて委託でき、何ができないのかを切り分ける作業だ。特に日本の業務内容は複雑なケースが多い。人事や総務などで明文化しにくい慣行があってルールが定型化されていなかったり、属人的な経験に依存していたりする業務に心当たりがある企業は多いだろう。

 「定型化できない」といって放置していては、委託できる作業が減るのに加え、効率的に業務をこなすためのマニュアルも作れず、先に述べたBPOのメリットを生かせない。切り出せない業務をできるだけ小さくすることがミソとなる。そうして切り出された業務が機能的につながったものが、ビジネスプロセスである。このプロセスを重視する考え方がDXのベースにある。つまり、プロセス指向の考え方を実践することが、DXの成功につながるのである。そして、今まさにAIがその強力な支援ツールとして使えるようになってきたわけだ。

 これからDXを全社的にうまく進める企業は、おそらくBPOを効果的に適用していくだろう。そう考えると、BPOは企業にとって働き方の変革にもつながるといえそうだ。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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