汎用LLMはもう終わり? Gartnerが「次の5年」を決める技術を発表:AIニュースピックアップ
Gartnerは「戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」を発表し、AIを中心に企業変革を促す10の戦略的トレンドを紹介した。これらのトレンドは単なる技術動向にとどまらず、ビジネス変革そのものを推進する要素として位置付けられている。
ガートナージャパン(以下、Gartner)は2025年10月29日、「戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」を発表した。Gartner IT Symposium/Xpo 2025(期間:10月28〜30日)において、Gartnerバイスプレジデントアナリストの池田武史氏によって紹介された。
Gartnerが予測する「次の5年」を決める技術
池田氏は2026年がテクノロジー・リーダーにとって重要な転換点となる年と説明した。急速に進行するディスラプションとリスクの増大、AIを中心とした技術革新の加速が企業経営に直接的な影響を及ぼすと指摘し、責任あるイノベーション、運用上の卓越性、デジタルトラストの確立が不可欠になると述べている。これらのトレンドは単なる技術動向にとどまらず、ビジネス変革そのものを推進する要素として位置付けられている。
2026年の戦略的テクノロジーの主要テーマとして、Gartnerは以下の10領域を挙げている。
1.AIネイティブ開発プラットフォーム
AIネイティブ開発プラットフォームは生成AIを使った開発環境により、ソフトウェアの構築がより迅速かつ容易になる。非テクノロジー分野の専門家も小規模なチームでアプリケーション開発に関与できるようになり、人間とAIが協働する新たな開発体制が形成されつつある。2030年までに80%の組織が大規模な開発チームをAI活用型の小規模チームへ転換させる見通しだ。
2.AIスーパーコンピューティング・プラットフォーム
AIスーパーコンピューティング・プラットフォームは、CPUやGPU、AI ASIC、ニューロモルフィック・コンピューティング、その他のコンピューティング・パラダイムを統合する。組織はデータ集約型のワークロードを効率的に処理し、ヘルスケアや金融、公益などの分野でモデル化やシミュレーションの高度化を推進できる。2028年までに主要企業の40%以上がハイブリッド型コンピューティングを採用すると予測されている。
3.マルチエージェント・システム
マルチエージェント・システム(MAS)は、複数のAIエージェントが相互作用し、複雑な業務を自律的に遂行する仕組みだ。エージェント同士の連携により、ビジネスプロセスの自動化やチームの効率化が実現する。これにより、組織は柔軟で拡張性のある業務運営をできるようになる。
4.ドメイン特化言語モデル
「ドメイン特化型言語モデル」(Domain-Specific Language Models:DSLM)は、特定分野のデータで訓練されている言語モデルであり、汎用的なLLMよりも高い正確性と信頼性を備える。専門領域のコンテキスト理解に強みがあり、AIエージェントによる判断の精度を高める。Gartnerは、2028年までに企業で利用される生成AIモデルの過半数がドメイン特化型となると見込んでいる。
5.フィジカルAI
フィジカルAIはロボットやドローンなど、現実環境で認識、行動する機械を強化する技術だ。自動化や安全性を重視する産業分野での導入が進みつつある。他方で雇用上の懸念も生み、慎重なチェンジマネジメントが求められる可能性が指摘されている。
6.先制的サイバーセキュリティ
先制的サイバーセキュリティとはAIによって強化したセキュリティ運用を活用し、プログラムで攻撃発生前に脅威を遮断する戦略だ。2030年までに最高情報責任者(CIO)が受け身の防御から積極的な防御への転換が進み、セキュリティ支出の半分を先制的ソリューションが占める見通しと分析している。
7.デジタル属性
データやソフトウェアの出どころや完全性を確認する技術だ。サプライチェーン全体での追跡が求められる中、SBOMやデジタルウオーターマークなどが普及しつつある。2029年までに、この分野への投資を怠った組織が巨額のリスクを負う可能性があるとされる。
8.ジオパトリエーション
ジオパトリエーションとは、地政学的リスクの高まりを背景に企業がデータやアプリケーションをグローバルクラウドからソブリン・クラウドや地域のクラウドプロバイダー、自社データーセンターへ移設することを意味する。CIOはデータレジデンシ(データの保存場所)やコンプライアンスなどを厳格に管理できることが利点とされ、2030年までに欧州と中東の企業の75%以上が採用すると予測されている。
9.AIセキュリティ・プラットフォーム
AIセキュリティ・プラットフォームは、サードパーティー製およびカスタム構築のAIアプリケーション特有のリスクを統一管理する仕組みだ。プロンプトインジェクションやデータ漏えいを防ぎ、AIシステム全体に一貫したポリシーを適用できる。2028年までに企業の50%以上が導入すると見込まれている。
10.コンフィデンシャル・コンピューティング
コンフィデンシャル・コンピューティングはデータ処理中の機密性を保つ技術で、信頼できる実行環境内でワークロードを隔離する。クラウドや外部インフラを利用しつつも、データ保護を強化できる。2029年までに、非信頼インフラで実施されるオペレーションの75%以上がこの方式を採用するとみられている。
これらのトレンドは今後5年間にわたりCIOやITリーダーの意思決定に大きな影響を与え、業界全体の変革を促すとされている。AIの浸透と地政学的環境の変化を背景に、企業は新たな信頼構築と技術運用の在り方を再定義する局面に入っているといえる。
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