滋賀県、全庁6000人で生成AIを本格運用 データガバナンスと効率化をどう両立した?:AIニュースピックアップ
滋賀県は、全職員約6000人を対象に生成AIの本格運用を開始した。業務効率化を実現しつつ、行政情報の正確性とデータガバナンスを確保した方法とは。
滋賀県庁は2023年から生成AIの試行導入を実施し、文書要約や議事録作成などの業務で効果を確認してきた。同庁は、その成果を踏まえ、庁内に蓄積されたデータを基にAIが回答を生成する仕組みを本格導入することで、業務の精度と速度を高めるという。生成AIを日常業務に定着させ、職員の業務負担を軽減し、県民サービスの品質向上に寄与する方針だ。
滋賀県がデータガバナンスと効率化を両立した方法
NTTドコモビジネスは2025年10月30日、滋賀県の全庁約6000人の職員を対象に、生成AIサービス「exaBase 生成AI for 自治体」を導入し、同月から本格運用を開始したと発表した。
エクサウィザーズの「Exa Enterprise AI」との連携により、庁内独自データを活用した検索拡張生成(RAG)機能の運用を開始する。これは、2025年5月にのNTTドコモビジネスとエクサウィザーズの資本業務提携後、初めての大規模自治体用導入案件とされている。
exaBase 生成AI for 自治体は、全国の県庁における導入実績が43%を占めるとされる。文書作成や要約、アイデア生成などの一般的な機能に加え、庁内専用のデータベースを参照できる点が特徴だ。既存の業務フローにAIを組み込み、行政文書や過去の案件情報などに即した回答生成を可能とする。
同プロジェクトにおいて滋賀県庁は、全職員を対象とした体系的な研修プログラムを実施する。部署ごとの業務内容に応じたユースケースを設定し、職員一人一人がAIを活用できる環境を整備する計画だ。特定の担当者だけに利用が偏らないよう、全庁的な理解促進と利用定着を目指す。NTTドコモビジネスは導入計画策定や進捗管理、研修支援などを担い、Exa Enterprise AIは生成AIサービスのライセンス提供や研修コンテンツの設計を担当する。
運用開始後は、利用状況のデータを分析し、継続的な改善をする。約6000人という大規模での導入となるため、運用初期のサポート体制を強化し、利用定着と導入効果の最大化を図るとしている。
NTTドコモビジネスは、今回の取り組みを通じて自治体の業務改革を支援し、地域行政におけるAI活用の実例を拡大する。同社はNTTグループのAI技術資産を生かし、純国産の特化型大規模言語モデル(LLM)である「tsuzumi2」などの技術を基盤とするAIソリューションの開発を進めている。今後は、自治体や地域産業のデジタル変革を支える基盤企業として、行政分野におけるAI活用の高度化を支援する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
KDDI、さくら、ハイレゾが「日本GPUアライアンス」を設立 AI向けの計算資源の安定供給を目指す
KDDI、さくらインターネット、ハイレゾの3社は、日本のAI開発を支えるため「日本GPUアライアンス」を設立した。相互再販によりGPU資源の安定供給を実現し、国産クラウド基盤で安全性を確保する。
日本は“AIで100兆円創出”できるか? OpenAIが提言する、日本のAI推進戦略3つの柱
OpenAIは日本に向けたAI政策の枠組みを公表した。AI活用がもたらす経済価値は100兆円を超え、日本は歴史的転換点を迎えていると指摘。明治、戦後に続く第3の発展段階「知能の時代」を、日本はいかにして築けばよいのか。
“ChatGPT常駐ブラウザ”がついに登場 「ChatGPT Atlas」で見えた、AIと共に働く未来
OpenAIはAI機能を統合したWebブラウザ「ChatGPT Atlas」を公開した。文脈理解・要約・自動化機能を備え、ユーザー体験を革新する。AIと人の協働が融合する新しいWebブラウザへの取り組みと言える。
Microsoft 365にClaudeが統合 Teams、Outlook、SharePointなどの横断検索に対応
Anthropicは対話型AI「Claude」をMicrosoft 365と連携させ、企業内の文書・メール・チャットなどを横断検索できる「Enterprise Search」機能を発表した。組織内の知識活用を促進し、業務効率と意思決定の質を高める。