AIエージェントの価格をどう決める? 急成長企業が実践する料金モデル【調査】
Stripeの調査で、急成長企業はハイブリッド型や成果連動型など多様な価格モデルでAIエージェントの価値を捉え、収益増を実現していることが判明した。一方、日本企業は価格適合度やAI対応で遅れが目立つという。
ビジネスの収益成長を左右する重要な要素の一つが価格戦略の俊敏性だ。特に、その価値が多様で変動しやすいAIエージェント型サービスにおいて、その価格設定は企業の成長に多大な影響を与える。
ストライプジャパン(以下、Stripe)の調査レポートに基づき、AIエージェントを提供する急成長企業が具体的にどのような料金モデル(成果基準、作業ベースなど)を実践しているのかを解説する。
急成長企業が実践するAIエージェントの価格設定
Stripeは2025年11月17日、価格戦略に関する国際調査レポートを公表した。対象は日本を含む各地域のビジネスリーダー約2000人であり、価格設定の俊敏性と収益成長の間に強い相関がある事実が示されている。急成長中の企業では収益化手法を頻繁に更新する傾向が明確であり、回答者の84%がこうした性質を競争上の優位性と位置付けている。
レポートでは月額固定と従量課金を併用するハイブリッド型価格設定モデルや、利用量に応じて料金が変動する消費ベース型の従量課金モデル、利用者数を基準とするユーザー数課金型(シートベース)価格設定モデル、成果に応じて請求する成果連動型価格設定モデル、需要状況に応じて価格が変化するダイナミック・プライシングモデルなど、急成長企業が採用する幾つかの最新価格設定モデルが紹介されている。
急成長している企業の価格設定の傾向として、ハイブリッド型価格設定モデルの利用割合が57%となり、世界全体の36%を大きく上回っている点が注目されている。コラボレーションデザインプラットフォームを提供するFigmaがユーザー数課金型価格設定によるサブスクリプションおよび従量課金モデルを導入しているケースが紹介されている。価格設定を継続的な実証作業と位置付ける姿勢も特徴的とされ、過去2年間で3回以上も価格変更を実施した割合は67%で、世界全体の33%を大きく超えている。
顧客の成果と価格設定を結び付ける動きもある。回答者の77%が「顧客は成果連動型の価格設定を望んでいる」と考えているが、実施率は32%にとどまる。急成長企業は顧客の「サービス使用量」の定義を継続的に修正することで顧客が受け取る価値をより良くするようにしている。
AI分野ではエージェント型サービスを提供する企業が価格設定の工夫に積極的であり、成果基準や作業ベース基準のモデルを用いてAIエージェントのもたらす価値を捉えている。カスタマーサービスプラットフォームの「Intercom」は柔軟な請求プラットフォームを活用し、サブスクリプションの階層型プランおよび従量課金を組み合わせることでAIエージェントの料金体系を整備している。AI搭載のダイナミック・プライシングツールの採用率も高いとされ、パーソナライズプランの採用率は35%で、世界全体の24%を上回る。
日本企業の状況においては幾つかの顕著な違いが示されている。自社の価格設定が収益や顧客の目標と「適合している」と感じる割合は28%にとどまり、世界全体の58%との差が30ポイントとなった。AI製品の提供を「検討していない」と回答した企業は42%とされ、世界全体の20%と差があることが判明している。ダイナミック・プライシングをトレンドと捉えている企業は55%(グローバル平均80%)と、AIや最新トレンドへの対応の遅れも浮き彫りになっている。
また価格設定変更において「時間やリソースの不足」と挙げた日本企業は26%で、世界全体の11%より高い結果となった。AIエージェントの価値測定に対し「まだ分からない」と回答した企業は27%で、世界全体の11%との差も大きい。
Stripeは、こうした結果が日本市場における価格設定基盤の改善需要を示すと指摘している。複雑化する経済環境の下、柔軟で管理しやすい価格体系の整備を支える手段が求められる状況が示された。
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