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「運用の三重苦」から脱出してさらなる運用改善へ 三井住友信託銀行の運用DXの軌跡「継続した改善」を支援する運用基盤とは?

IT部門の多くが、大量アラートへの対応、担当者への手動連絡、属人化した運用という「三重苦」に悩んでいる。同様の課題を抱えていた三井住友信託銀行は、小規模な改善から運用DXを開始してミッションクリティカルなシステムにも適用範囲を拡大した。同社は「人が本来注力すべき業務に集中できる環境」を、どのように実現したのか。

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 多くのIT部門が、システムの大規模化と複雑化に伴う「運用の限界」に直面している。三井住友信託銀行のシステム運用部門も、この課題に悩まされてきた。同社はクラウドとオンプレミスを合わせて約1800台のサーバやネットワーク機器、200以上のシステムを運用している。

 同社の社内規定は、「アラート発生後30分以内に担当者にエスカレーションする」と定めている。エスカレーション先は約750に上り、アラートが同時多発した際のエスカレーションの遅延やオペレーターの経験値による情報伝達精度のバラつきが課題だった。

 この課題を解決するために同社が導入したのが監視や通報、対応、改善といった運用プロセスを一元的に支えるNECのインシデント管理ツール「WebSAM Cloud」だ。

 スモールスタートしたこの取り組みは、運用品質のさらなる向上を目指すフェーズに進展した。三井住友信託銀行の運用DXの軌跡から、運用管理を改善するヒントを探る。

1週間かかっていた設定変更を「即時反映」へ セルフメンテナンス化という解決策

 三井住友信託銀行の場合、WebSAM Cloudの導入によって、オペレーターの対応工数の50〜60%、オペレーターがシステム担当者に電話をかける件数の90%を削減した。こうした結果を受けて同社は、WebSAM Cloudの適用範囲を拡大することにした。

 ところが、適用範囲拡大に伴って運用現場に新たな課題が浮上した。設定変更依頼が運用部門に殺到し、対応が追い付かなくなったのだ。

 三井住友信託銀行の武藤由希子氏は、「異動時期には特に申請が集中し、設定変更の完了に1週間かかることもありました。これは運用品質における重大なリスクでした」と振り返る。

 この課題を解決するため、アラート通報先を利用者自身が管理できる「セルフメンテナンス化」を2025年2月に実装した。新たに追加された「通報先管理者」権限によって、所属プロジェクトの通報先情報であれば変更可能になった。

 武藤氏は「NECさんと月例で開催している定例会で相談したところ、通報先管理者権限が翌月には実装されました。所属プロジェクト以外の設定は改変できない仕様にしたことで、金融機関としてのセキュリティ基準を満たし、効率化と安全性を両立させました」と語る。

 このセルフメンテナンス化により、設定変更のリードタイムは「1週間」から「即時」に短縮した。現場のシステム担当者を対象としたアンケートによると、約80%が「手間が軽減された」と回答している。

運用品質向上に向け、「電話に出ない」を可視化

 三井住友信託銀行は、通報の自動化とともに運用品質の向上にも取り組んだ。同社の高橋淳也氏(高は「はしごだか」)によると、WebSAM Cloudのログ分析機能を駆使して運用品質を評価し、改善した。「ログ分析機能を使ってシステム別、エラー別の傾向を見つけています。全通報数に対して通報数が多いシステムや、通報数が急増したシステムを担当するチームへのヒアリングも実施しています」

 この分析とヒアリングによって通報対応の実態が分かった。WebSAM Cloud導入以前から「担当者が電話に出ない」というリトライオーバーの課題は認識されていたが、分析によって不必要なエラーが頻発していることが可視化され、ヒアリングによって本来対応が必要なエラーが埋没しているケースがあると分かったのだ。

 この状態が続くと、本当に重要なアラートを見逃しかねない。そこで高橋氏らは、分析結果を各チームと共有し、通報経路の改善と対応不要なエラーについてはフィルタリングするように促した。

 これにより、月30件程度発生していたリトライオーバーは、2026年3月時点ではほぼゼロ(1カ月当たり1件未満)に減少し、ピーク時に月間約2800件あった通報数は約1600件に減少した。結果として、監視リソースの最適化だけでなく「本当に重要なエラーに確実に対応する」という運用規律の順守にも寄与している。

武藤由希子氏高橋淳也氏 左から、三井住友信託銀行の武藤由希子氏(I&Tインフラサービス第三部 主任)、高橋淳也氏(同 I&Tインフラサービス第三部)

勘定系への適用拡張とAI活用という「次の一手」

 WebSAM Cloudの操作性についても、現場から高い評価が寄せられている。高橋氏は、「マニュアルを読み込まなくても直感的に操作できます」とし、武藤氏も「画面構成がシンプルで、機能間の動線も分かりやすく、誤操作の心配が少ないと感じています」と話すなど、日本の運用現場の声を反映した設計が好評だ。

 WebSAM Cloudによる同社のシステム運用改善は、NECの伴走支援にも支えられている。先ほどのセルフメンテナンス化の要望のように、定例会で伝えられた要望はNEC内で検討され、汎用(はんよう)性や重要性の高いものを中心に、新機能として順次反映されている。

 武藤氏は、「WebSAM Cloudは当社の西日本拠点にも拡大しています。NECさんのサポートを受け、迅速に進められました」と述べる。

 セルフメンテナンス化によって運用部門の負荷が分散され、保守・開発部門が設定を管理できる仕組みを整えたことで同社は次の挑戦に踏み出した。「管理対象が増えても運用が回る」という確信が、ミッションクリティカル領域に踏み出す原動力になったのだ。

 同社は、分散系システムが中心の管理対象を勘定系システムからのエラー取り込みに拡大することを検討しており、WebSAM Cloudは運用基盤としての役割をさらに増しつつある。

図1
WebSAM Cloud導入前後の変化(三井住友信託銀行提供資料を基に編集部作成)《クリックで拡大》

 今後、WebSAM Cloudに搭載されているインシデントをエンド・ツー・エンドで管理するインシデント管理機能の活用も視野に入れる。WebSAM Cloudに蓄積されたインシデント対応の履歴をAIが分析し、恒久対策の策定や類似事例の提案を支援する機能によって経験と勘に頼ってきた運用判断をデータドリブンなアプローチにシフトさせることを検討している。

 武藤氏は、「AIを活用して、運用担当者が本来注力すべきシステム運用方針の策定や運用の設計といった業務に集中したいと考えています」と語る。

 こうした利用拡大の展望は、基本となる運用の効率化が実現したからだ。システム運用の課題に悩む企業に、武藤氏は「何から手を付けたらいいか分からないといった状態からでも、NECの手厚いサポートで改善の第一歩を踏み出せます」と背中を押す。

 NECは2026年4月以降、WebSAM Cloudの機能限定版を利用期間の制限なく無料で試せる「フリーミアムモデル」の提供を開始した。効果を実感した後は有償プランに段階的にアップグレードできる仕組みも整っており、「運用DX」を検討する企業にとって選択肢の一つとなりそうだ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年5月22日

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