日本において「5G」を使った携帯通信サービスが始まって7カ月が経過しました。2020年冬商戦向けのスマートフォンでは5G対応機種が増え、5G通信を利用できる場所も少しずつですが増えてきました。
そんな中、5Gスマホが増えるにつれて「ミリ波」という言葉をよく聞くようになりました。ミリ波とは、一体何なのでしょうか。
「ミリ波(mmWave)」は、一般的に30GHz帯から300GHz帯の電波のことを指します。この周波数帯の電波には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
この長短を鑑みた結果、従来のミリ波は主に「見通しが完全に効く場所における1対1の無線通信」や「レーダー」などに使われてきました。一般的な移動体通信(携帯電話など)では使われてこなかったのです。
しかし、使われていないということは、帯域を広く確保しやすいということです。一般に、携帯電話のデータ通信は帯域が広いほど通信も速くなります。そのことから、5Gでは「ミリ波も通信に使おう!」という機運が高まりました。
厳密にいうと、現状の5Gにおいて「ミリ波」と呼ばれている周波数帯域には、一般的なミリ波より少し低い26GHz帯〜29GHz帯も含まれています。ただ、従来の移動体通信よりも非常に高い周波数帯を使っていることには変わりなく、5Gでは26GHz帯以上の周波数帯をまとめて「ミリ波」と呼んでいます。
5Gといえば「Sub-6(サブシックス)」という言葉もよく聞きます。Sub-6は6GHz帯未満の電波を指す用語です。
ミリ波と比べると、Sub-6は遮蔽物や雨に強いという特徴があります。それゆえに、特に3.5GHz帯以下の周波数帯は、従来の携帯電話はもちろん、その他の無線通信でも多用されています。それゆえに、帯域を広く取りづらい(=速度を増しづらい)という課題があります。
そのため、5Gでは「Sub-6で通信エリアのカバーを、ミリ波で高速通信を」といった使い分けがなされる傾向にあります。
日本では、5G専用のSub-6帯域として「3.7GHz帯」「4.5GHz帯」が用意され、今後はエリアカバーにより優れているLTE(4G)用帯域の5Gへの転用も始まります。ミリ波は28GHz帯が5G用に用意され、今後さらに高い周波数帯の利用も検討が進められることになっています。
先述の通り、ミリ波は超高速通信を実現しやすいというメリットがある反面、遮蔽物や雨に弱いというデメリットもあります。それを“逆手”に取って、海外では家庭用の固定ブロードバンド回線の代用としてミリ波の5Gを活用しようという動きも見受けられます。ケーブルを引き込む手間を大幅に省きつつ固定ブロードバンド回線並みの高速なインターネットを実現できるからです。
ただ、それでも遮蔽物に弱いという特性は克服できないため、ミリ波で5Gエリアを広げようとすると、従来よりも非常に多くの基地局を設置しなければなりません。そのため、ミリ波の基地局は非常に限られた“場所”にのみ設置される傾向にあります。
家庭用の固定ブロードバンド回線の代用として使う動きには乏しいものの、ミリ波の基地局設置が局所的であることは日本も同様です。スタジアム(サッカー場や野球場)や周囲に遮蔽物のない広場など、エリアはSub-6以上に“ピンポイント”です。
NTTドコモとau(KDDIと沖縄セルラー電話)では、ミリ波の5Gが使える場所をエリアマップで示しています。ミリ波対応スポットなら、Sub-6単独の5Gよりもさらに高速な通信を期待できます。
Sub-6とミリ波の周波数が離れすぎていることもあり、ミリ波対応の5G端末はSub-6用のアンテナとは別にミリ波用のアンテナを積む必要があります。エリアが非常に限られていることと相まって、ミリ波対応の5G端末は非常に限られます。
自分の身近にミリ波対応のエリアがある場合、あるいは将来に備えてより高速な通信に対応する5G端末が欲しい場合は、ミリ波対応かどうかチェックした上で購入すると良いでしょう。
11月7日現在、NTTドコモにおいてミリ波に対応する5G端末は以下の通りです。ミリ波エリアでは、下り最大4.1Gbps、上り最大480Mbps(理論値)の通信に対応します。
(※1)端末の出荷時期によっては、端末のソフトウェア更新が必要です
(※2)2020年冬に実施予定のソフトウェア更新を適用するとミリ波に対応します
11月7日現在、auにおいてミリ波に対応する5G端末は以下の通りです。ミリ波エリアでは、下り最大4.1Gbps、上り最大481Mbps(理論値)の通信に対応します。
(※3)端末の出荷時期によっては、端末のソフトウェア更新が必要です
11月7日現在、楽天モバイルにおいてミリ波に対応する5G端末は自社オリジナルの「Rakuten BIG」のみです。ミリ波対応エリアでは、下り最大2.8Gbps、上り最大273Mbps(理論値)の通信に対応します。
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