2018年頃から、一部の通販サイトで「ラベルレス飲料」の販売が始まりました。2020年に入るとラベルレス飲料を販売するメーカーが増え、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも時々見かけるようになってきました。
そもそも「ラベルレス飲料」とはどのようなものなのでしょうか。そのメリットは何なのでしょうか。
容器に入れて販売される飲料は「加工食品」という扱いとなります。そのため、本来は「食品表示法」に基づいて「品名(飲料の種別)」や「栄養成分表示」などを表示する義務があります。また、容器には「資源有効利用促進法」に基づいて容器の分別回収(素材の識別)に必要な表示を添える義務があります。
一般的に、ペットボトル飲料では、プラスチックラベルに両方の法律に基づく表示をまとめて印字し、それをペットボトルに貼り付けることで要件を満たしています。しかし、このラベルとペットボトル本体は、一般的に別の資源/ゴミとして扱われるため、資源として回収したりゴミとして出したりする際に“分離”する必要があります。
その名の通り、ラベルレス飲料は製品情報を表記するための「ラベル」を貼り付けていないペットボトル飲料のことを指します。ラベルを省くことで、資源/ゴミの分別の手間を省けるだけではなく、ゴミの排出量も減らせます。
しかし先述の通り、ペットボトル飲料には法令に基づく義務表示をしなければなりません。これらの義務を、どうやって解決しているのでしょうか……?
食品表示法では、販売される加工食品“1つ1つ”に義務表示が求められます。ただし、複数個の加工食品を1つのパッケージに入れて販売する場合は、まとめて入れる箱や袋に義務表示をすることで、中に入っている個包装の義務表示を省くことができます。
そこで、義務表示を箱や外装紙に印字する(=ばら売りしない)ことで、ペットボトルを「個包装」とみなして義務表示を省いています。ラベルレス飲料の多くが通販限定なのは「箱売り」を基本としているからなのです。
ちなみに、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで1本ずつ売られているラベルレス飲料は、小さなタグシール上に義務表示をぎっちりと印字することで法令上の問題を解決しています(このような売り方は「ラベルレス風」と呼ばれることもあります)。
繰り返しですが、食品表示法では販売される加工食品“1つ1つ”に義務表示をしなければなりません。そのため、箱/パック売りされたラベルレス飲料をばら売りすることは食品表示法上できません。
義務表示に関する扱いは、無償を含む「譲渡」でも同様となるため、ラベルレス飲料は家庭内での消費にとどめるようにしましょう。
資源有効利用促進法では、容器の分別回収に必要な表示を添える義務があります。そのため、ラベルレス飲料の初期段階では、同法において必要な表示を印刷したタグシールをペットボトル(個包装)に貼り付けていました。
2020年4月、表示に関する詳細を定める経済産業省令が改正されました(参考リンク:PDF形式)。これにより、箱/パッケージ単位で販売される場合に限り、箱/パッケージに識別表示をすることで個包装へのラベル表示を不要としました(※)。そのため、最近販売されているラベルレス飲料は、タグシールも省かれているものが増えています。
(※)ペットボトル本体への刻印に関する要件に変更はありません。また、ペットボトルのキャップなど、別素材に対する表示は必要です(ラベルレス飲料の多くは、キャップ自体に「プラ」印字をすることで対応しています)
ラベルレス飲料は、ミネラルウォーターを中心に展開されてきましたが、最近では緑茶やスポーツドリンク、コーヒーなど展開ジャンルが広がってきました。もちろん、ラベル付きの商品と味や品質に違いはありません。
自宅内で消費する分においてラベルレスタイプを選べば、先述の通り資源/ゴミの分別の手間が省けて、出すゴミの量も減らせます。「身近なエコ」の第一歩として買ってみるのもアリでしょう。
ラベルレス飲料の多くは、通販限定販売です。気になる人は、各種ECサイトをチェックしてみてください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.