ハイビジョンテレビやフルハイビジョンテレビよりもきめ細かい表示ができる「4Kテレビ」。数年前まではその多くを上位(ハイエンド)モデルが占めていましたが、40インチ(型)台以上の画面サイズでは、エントリーモデルや中位(ミドルレンジ)モデルでも4Kパネルを搭載するテレビが増えて、以前よりも手頃になりました。
4Kテレビのきめ細かさを生かせるコンテンツの1つが「新4K衛星放送」です。BS(放送衛星)から受信するものは「BS 4K放送」、CS(通信衛星)から受信するものを「CS 4K放送」と呼ばれていて、これらを総称したものが新4K衛星放送……なのですが、全ての4Kテレビで受信できるわけではありません。また、受信に用いる機器によっては、一部のチャンネルを受信できないケースがあります。
この記事では、新4K衛星放送を受信するために必要なものをチェックしつつ、気を付けるべきポイントをチェックします。「4Kテレビをもっと活用したい!」という人の参考になれば幸いです。
その名の通り、新4K衛星放送は放送が4K解像度(Ultra HD/UHD:3840×2160ピクセル)で行われることが特徴です。地上波デジタル放送やBS/110度CSデジタル放送の約4倍の解像度(きめ細かさ)となるので、対応するテレビを用意すればよりキレイな映像を楽しめるというわけです。
デジタルテレビ放送において、放送局から送られてくる映像の解像度は以下の通りです。
地上波デジタル放送や一部のBS/110度CSデジタル放送は、伝送する映像の容量を軽減するためにアスペクト比(縦横比)を「4:3」とした映像を伝送しています。ただし、デジタル放送では画面のアスペクト比を「16:9」と定めているため、伝送される映像は引き伸ばし(画素補完処理)されることを前提にしており、実際に表示される際はチューナー(テレビ)側の処理によって「16:9」に引き伸ばされます。
なお、一部のテレビでは表示設定を変更すると引き伸ばし前の「4:3」映像を確認できます。
新4K衛星放送は単に映像の解像度が高くなっただけではなく、以下のような特徴を持っています。
ただし、これらの特徴は「放送される番組」「受像機」「ディスプレイ(外付けの場合)」の全てが対応することで初めて実現されるものです。テレビを選ぶ際は、上記のスペックをよく見るようにしたい所です(今回は本題ではないので、説明は割愛します)。
新4K衛星放送を視聴する方法には、幾つかのパターンがあります。テレビなど、自分の手持ちの機器や周辺環境を総合して、最適な方法を選んでください。
自宅にBS/CSアンテナがある場合、あるいは契約しているCATV(ケーブルテレビ)が4K衛星放送のパススルー伝送に対応している場合は、新4K衛星放送を受信できるチューナーを内蔵している4Kテレビを用意することをおすすめします。最近は中位モデルでもチューナー内蔵モデルが増えています。
ただし、既にある機器の構成によっては、一部のチャンネルの視聴をするために機器の換装が必要となる場合もあります。この辺の注意点は別項目で説明します。
新4K衛星放送の規格が確定する前に発売された「4Kテレビ」や、現在でも低価格な「4Kテレビ」には新4K衛星放送のチューナーを内蔵していないモデルもあります。その場合は、外付けの新4K衛星放送チューナーをつなげることで新4K衛星放送を楽しめるようになります。パソコン用の4Kディスプレイを使って新4K衛星放送を視聴したい場合も、この方法で楽しめます。
ただし、チューナーを内蔵していないテレビやディスプレイで新4K衛星放送を楽しむ場合、つなげるテレビ/ディスプレイが以下の条件を満たす必要があります。
ただし、チューナー内蔵テレビと同様に、既にある機器の構成によっては、一部のチャンネルの視聴をするために機器の換装が必要となる場合もあります。
一部のCATV事業者やIP(インターネット)テレビの事業者は、新4K衛星放送の受信に対応するセットトップボックス(STB:チューナー)を用意しています。自宅にBS/CSアンテナがない場合、STBを提供しているCATV、あるいはIPテレビに加入して、テレビやディスプレイにSTBをつないで見るという選択肢も取りやすいです。
CATVの場合、「トランスモジュレーション」(周波数変換)して伝送している事業者ではSTBを介した視聴が必須となります。視聴にSTBが必須のCATVを利用している場合、購入した4Kテレビが新4K衛星放送チューナーを内蔵していると「宝の持ち腐れ」となるため(※1)、あえてチューナーを内蔵しない4Kテレビを購入するという選択肢もアリです。
IPテレビでは、NTTぷららが提供する「ひかりTV」「ひかりTV for docomo」が新4K衛星放送のうちBS 4K放送の一部を再送信するサービスを提供しています。ただし、BS 4Kの再送信を受信するには、両サービスにおいて対応するSTBを購入するかレンタルを受ける必要があります。ひかりTVを契約していても、ひかりTV対応テレビでは直接受信できないので注意してください。
(※1)CATVに対応している集合住宅では、独自にアンテナを設置することでBS/CS放送のパススルー配信にも対応しているケースもあります。詳しくは物件の所有者や管理者に問い合わせてください
従来の衛星放送では「BS右旋」「110度CS右旋」の2種類の電波を使っています。それに対して、新4K衛星放送では「BS右旋」「BS左旋」「110度CS左旋」の3種類の電波を使っています。「右旋」「左旋」は電波の回転方法のことで、右旋は右回り、左旋は左回りということになります。
実は、この「右旋」「左旋」はものすごく重要な要素で、既にBS/110度CSアンテナを設置してある場合でも受信したいチャンネルによってはパラボラアンテナの取り換えが必要となります。
BS右旋を使って放送される以下のチャンネルだけを視聴する場合は、パラボラアンテナの取り換えは不要です。BSを受信できる古いパラボラアンテナが設置されている場合は、そのまま使えます。
BS左旋、または110度CS左旋を使って放送される以下のチャンネルを視聴する場合は、BS左旋や110度CS左旋の電波を受信できるパラボラアンテナが必要です。古いBS用パラボラアンテナや、BS/110度CS(右旋)兼用パラボラアンテナを使っている場合は、アンテナを取り換えて下さい。
新4K衛星放送の受信のためにパラボラアンテナを新設する場合は、BS左旋/110度CS左旋に対応するものを用意しましょう。
先述の通り、BS左旋や110度CS左旋で放送されるチャンネルを視聴する場合、パラボラアンテナの換装が必要な場合があります。しかし、これらのチャンネルを受信する場合、場合によってはアンテナからテレビ(チューナー)に至るまでに介在する機器も換装が必要となります。具体的には、以下の機器がBS左旋や110度CS左旋で利用される周波数(3224MHz前後)に対応していない場合、受信が不安定になることがありますので、交換を検討してください。
パラボラアンテナと同様に、これらの機器をこれから新設する場合は対応品を用意することをおすすめします。
さらに、BS左旋や110度CS左旋で放送されるチャンネルを視聴する場合、従来よりも利用する周波数帯が高いため、漏えいした電波が2.2GHz〜3.2GHz帯の無線機器の動作に干渉したり、逆に2.2GHz〜3.2GHz帯の無線機器が放送の受信に悪影響を与えたりする可能性があります。
自宅で2.4GHz帯の無線機器(IEEE 802.11ax/b/g/n規格の無線LAN、Bluetooth機器、ワイヤレスキーボード/マウスなど)を使っている場合は、アンテナからテレビ(チューナー)の間に介在する機器やケーブルについて、電波の漏えい対策がしっかりと施されたものを利用してください。特に「シールドのなされていない混合器/ブースター/分波器」や「芯線がむき出しな配線」には気を付けましょう。
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