筆者が警察官だったころ、交通事故現場で両者の言い分が異なることは珍しくありませんでした。両者が信号が青だったと言い張ることもあります。そうした真偽を明らかにするために有効なのが「ドライブレコーダー(ドラレコ)」です。
しかし、ドラレコは多くの機種が販売されており、どれを選べばよいのか分からないという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、元警察官の視点からドラレコの選び方を解説します。具体的な機種も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
東北大学中退後、15年間警察で勤務。在職中は主に刑事部門を担当し、鑑識や初動捜査、知能犯罪捜査などを手がける。在職中に日商簿記2級、2級FP技能士、情報セキュリティスペシャリストなどの資格を取得。警察を退職後ライターとして活動を始め、前職や資格をいかして情報セキュリティなどIT関連や家計の節約に関する記事などを手がけている。
ドラレコの映像は、主に以下3つの場面で役立ちます。
交通事故の場合、警察はドラレコの映像から車両の速度や位置などを計算してそれぞれの過失を明らかにします。そのため、ドラレコに求められるのはゆがみのない映像です。魚眼レンズなどゆがみが大きいドラレコの場合は、利用しにくいことがあります。
あおり運転などのトラブルから、暴行や器物損壊などの犯罪に巻き込まれるケースではどうでしょうか。この場合、警察では車両の速度や位置などは計算しないため、ゆがみの有無はそれほど大きな問題ではありません。
大切なのは、危害を加えられた状況が写っているかどうかです。交通事故では、はっきりと写っていない場合でも前後の状況や車両の損傷位置などから判断できる場合もありますが、暴行や器物損壊では決定的瞬間が写っていることが重要視されます。そのため、死角ができるだけ少ないドラレコが望ましいでしょう。
駐車中に車上ねらいや器物損壊などの被害に遭うケースもあります。この場合も、犯行の瞬間が写っていることが重要です。また駐車中に発生した犯罪の場合は、犯人が逃走しているケースが多いことから、犯人を特定するためにできるだけ映像が鮮明であることが望まれます。
ドラレコを選ぶ際は、以下3つの点に着目しましょう。
画角(映像として写る範囲)は、基本的に広いほうがよいでしょう。ただし、先述したように魚眼レンズのように画角が広すぎると映像がゆがむため、交通事故で利用する際には不利なケースもあります。
交通事故対策を重視するのであれば、前後2カメラがおすすめです。その他の犯罪対策を重視するのであれば、前後2カメラのほか、死角の少ない魚眼レンズを利用してもよいでしょう。
画質も良いに越したことはありませんが、最近の機種はどれも画質が向上しているため極端な違いはなく、それほど気にしなくてよいと言えます。ただし、中古などで古い年式の機種を買う際は画質に気を付けてください。古い機種は機能面でも劣るケースが多いため、あまりおすすめしません。
高画質の機種を使う場合は、SDカードなどの記録メディアの容量にも気を付けてください。容量が少ない記録メディアを使っていると、画像がすぐに上書きされてしまいます。
交通事故にしてもその他の犯罪にしても、事故や犯罪の瞬間のみが撮影されていればよいというわけではなく、前後の状況が写っていることも重要です。できるだけ容量が大きなものを選んでおけば安心です。
最近の機種では、駐車中に録画する機能を持つドラレコも増えています。ただし車のバッテリーを消費するため、常時録画をしない機種が多いです。常時録画をしない場合は、タイムラプスによる撮影や、動体検知・衝撃検知などで作動します。
こちらも一長一短があるため、使いたい状況に合わせて選びましょう。なお、人通りが多い場所に駐車することが多い場合は、動体検知で撮影する機種を選ぶと必要以上に録画され、バッテリーなどに負担がかかるので注意が必要です。
コムテックの「ZDR035」は、前後2カメラを備えたオーソドックスなドラレコ。画角は前後とも168度のため、死角は左右に若干発生するのみです。オプションを利用すれば駐車中の録画もでき、衝撃感知により最大24時間記録が可能。ショッピングサイトで2万円台前半から販売されています。
コムテックは元々レーダー探知機などを製造していた企業で、ドラレコについても定評があります。ドラレコの中には1万円を切るような安い機種もありますが、いざというときに動作しなければ意味がありません。信頼性もドラレコを選ぶ上では大切です。
筆者も使用しているケンウッドの「DRV-CW560-K」は、魚眼レンズのドラレコです。360度にわたって録画できるため、死角が少ないのが特徴。オプションを利用すれば駐車中の録画もできます。
一方で、車内前部に取り付けた場合は、後部の様子はほとんど写らないなど限界はあります。また一般的なレンズのドラレコと比べると、画質が劣る点もデメリットです。
しかし、1台で多くの範囲をカバーできる点や、前後2カメラ式と比べて取り付けが簡単な点はメリットでしょう。ショッピングサイトで2万円を切る価格で販売されており、比較的安価なのもポイントです。
「GP-4K」は、前後2カメラ式のドラレコです。製造元のアサヒリサーチについて聞いたことがないという方も多いかもしれません。しかしアサヒリサーチは、警察や消防など官公庁へドラレコを多数納入していることから、信頼性は十分です。
画質は4Kでオプションを利用すれば駐車中の録画もできるなど、必要な機能は一通りそろっています。デメリットは、ショッピングサイトでの販売価格が4万円台後半からと、かなり高めである点です。
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