登山ウェアとして定番になりつつある「メリノウール」のベースレイヤー(肌着)。ポリエステルなどの化学繊維のベースレイヤーよりも価格が高いものがほとんどですが、なぜ多くのユーザーに選ばれているのでしょうか?
今回は、メリノウール素材のベースレイヤーが登山シーンで人気がある理由について解説します。
フリーランスのライター・編集者。元アウトドアショップ店員。富士登山をきっかけにアウトドアにはまり、登山やキャンプ、トレイルランニングなど幅広いアクティビティを一年中楽しんでいます。自身の山体験や、店員時代の接客経験を生かし、リアルで深い内容を発信!リモートワーカーのため、仕事や日常を快適かつ生産的に行うためのガジェット選びも得意です。
登山のベースレイヤーとして人気が高いメリノウール。メリノ種の羊からとれた天然素材で、繊維が細く肌触りが良いのが特徴です。さらに熱が逃げにくいことから保温性が高く、セーターや靴下などに使われています。
そんなメリノウールは、通気性や吸湿性など、スポーツウェアにぴったりな機能も満載。たくさん汗をかいたり、雨風や暑さ、寒さにさらされたりすることもある登山にぴったりな素材なのです。
吸水性・吸湿性の高さも大きな特徴です。登山中にかいた汗や服の中の湿気をすばやく吸着し、繊維の中に取り込みます。そのため、体がベタついたり、熱気がこもったりするのを防ぎ、快適に登山を続けることができます。また、保温性がありつつ適度に風を通すため、服の中を適温に保ってくれるのも魅力です。
吸収した水分は急激に蒸発するのではなく、ゆっくりと蒸発していく点もポイント。肌の近くにある水分が蒸発する時には体温を奪いますが、ゆっくりと蒸発するメリノウールなら急な冷えを感じることがなく、汗冷えも防げるというわけです。
登山は季節を問わず汗をかくアクティビティ。メリノウールのベースレイヤーを選ぶことで、登山をより快適に、安全に楽しめることでしょう。
メリノウールのもう一つの特筆すべきポイントは、防臭性が高いこと。ポリエステルなどの化学繊維は着続けていると汗の臭いが気になることがありますが、メリノウールなら数日間着続けてもOK。天然の抗菌作用により、においの元となる雑菌の増殖をおさえるため、たくさん汗をかいた後でも臭いにくいのです。
そのため、コースタイムが長い登山や泊まりがけの縦走など、こまめに着替えられない状況にもおすすめです。メリノウールのインナーや靴下は柔らかく、着心地・履き心地が良いのでとても快適。たくさんの着替えをバックパックに入れる必要がなくなり、荷物の軽量化にもつながります。
メリノウールにも弱点はあります。水分をたっぷりと吸収できる強みがあるものの、その分化学繊維と比べると速乾性は低め。また、洗濯の仕方によって伸びたり縮んだりすることや、枝などにひっかけて穴があいてしまうこともあるため、耐久性も気になるところです。
しかし最近では、そのようなデメリットを他の素材で補う「ハイブリッド」なウェアも登場しています。例えば、ポリエステルとメリノウールを50%ずつ混ぜたインナーは、ポリエステルならではの高い速乾性やガシガシ洗える耐久性を持ちつつ、メリノウールの吸湿性や着心地、防臭性を兼ね備えています。
さまざまな混紡割合のアイテムが販売されているので、自分の重視したい機能性によって選ぶのがおすすめです。
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