ここ最近、電動キックボードと合わせて違法「モペッド」の取り締まりに関するニュースが増えています。大手通販サイトでも簡単に入手できるモビリティですが、無免許で乗っていたり、ナンバー登録をしていなかったりする人も少なくありません。
本記事では、モペッドと電動アシスト自転車の違いを簡単に解説します。
大屋 雄一
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1,500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
小型のスクーターを指す言葉として、原付、あるいは原チャリという単語が広く用いられています。そもそも原付とは「原動機付自転車」の略称で、その名のとおり原動機(エンジンやモーター)を後付けした自転車を指しています。
二輪メーカーのホンダは、この自転車用補助エンジンを終戦直後の1946年から販売していました。初の自社設計エンジン「ホンダA型」のあと、1952年にリリースしたのが「カブ号F型」です。
ヨーロッパなど海外では、戦前から補助エンジンを搭載した自転車が販売されており、モーター(Motor)とペダル(Pedal)を組み合わせた造語である「モペッド(Moped)」と呼ばれていました。
その昔、フランス製のモペッドに乗っていた方に話を聞いたことがあります。エンジンは現在の原付スクーターよりもはるかに非力で、急な上り坂ではペダルによる人力を加えないと進まなかったそう。つまり、本当の意味での「補助」でしかなかったようです。
さて、補助動力を持つ自転車として、まず思い浮かぶのが電動アシスト自転車ではないでしょうか。電動モーターによって人力を補助する仕組みが与えられた自転車のことで、かつてのモペッドと発想は共通です。
ただし、決定的な違いは「搭乗者がペダルをこがないと走行しない構造である」ことです。また、道路交通法施行規則第1条の3において、次のように定められています。
補助力の上限速度を時速24kmに設定しているのは、原付一種バイクの法定最高速度(時速30km)との兼ね合いからです。こうした基準を全て満たしていれば「自転車」に区分され、運転免許がなくても公道で乗ることができます。また、ナンバーを登録する必要もありません。
このように、電動アシスト自転車は「ペダルをこがないと走行しない」のに対して、モペッドはペダルをこがずとも、つまりエンジンや電動モーターの力のみでも走行が可能です。たまに街中で、ペダルをほとんどこいでいないのにスーッと走っていく自転車を見かけますが、おそらくほとんどがモペッドでしょう。
モペッドは、2024年3月5日に閣議決定された道交法改正案によって、原付バイクに区分されると明確化されました。なお、警察庁では「ペダル付きの原動機付自転車」という呼称を用いています。
原付バイクということは、一般公道で乗るには該当する運転免許が必要です。また、自賠責保険への加入およびナンバープレートの装着、ヘルメットの着用義務なども発生します。
車体については、ヘッドライトやテールランプなどの灯火類、バックミラー、ホーン、スピードメーターなどが装着されていなければなりません。
ペダルが付いているのでこげば人力のみで進むこともできますが、たとえモーターの電源をオフにしても「原付バイク」として扱われるので、無免許で一般公道を走ることはできないのです。
関連する問題として、大手通販サイトで販売されている電動アシスト自転車の中には、国内の基準に適合しない製品があることを、国民生活センターが10銘柄をテストした上で警鐘を鳴らしています。
具体的には、アシスト比率の上限値を超えている、時速24kmを超えてもアシスト力が途切れない、スロットルのような装置があり加速できるなどです。こうした不適合車を公道で走らせると、搭乗者が罰則の対象となってしまいます。
そのため、購入時には安全の目安となるTSマークやBAAマークが付いているか、型式認定を取得しているかなどをチェックし、もしそうした文言がサイトに見当たらない場合は、事業者に問い合わせると安心でしょう。
モペッドも電動アシスト自転車も、短距離を移動するには非常に優れたモビリティです。適法性や安全性を十分に確認した上で、その便利さを享受したいですね。
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