スマートフォンは板状のためデザインの多様化が難しいとされていますが、デザイン面で果敢に攻めているのがイギリスのデジタル機器メーカーNothing Technologyのスマホ「Nothing Phone」シリーズです。
房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に業界動向を追っている。
Nothing Phoneは、内部構造を見せる透明な背面パネルや、LEDライトによる通知機能「Glyph Interface(グリフインタフェース)」が特徴。シンプルなiPhoneや、カメラの目立つスマホに慣れた目にはとても新鮮に映ります。
外観だけでなく中身も凝っています。Androidベースですが独自の「Nothing OS」を用意し、ドットで形作ったオリジナルフォント「Ndot」が使われていたり、アプリアイコンが単色で画面が非常にシックだったりと、細部までこだわった作りが印象的です。ユーザーはファッションに敏感な若い人たち、クリエイティブな人たちが多いと言われていますが、Nothing Phoneを見ると納得できます。
しかし、Nothing Phoneは外観がユニークなだけのスマホではありません。Nothingが2022年に日本に上陸した際、「Phone (1)」に触れた筆者は、「これは良い意味で普通のスマホだ」と感じました。デザインの至る所にこだわりは感じますが、普通に快適に使えるスマホだったからです。グリフインタフェースにしても、様々な通知を光の動きで伝えるという機能的な意図があります。見た目だけで判断してはいけない。その印象は今でも変わりません。
24年発売の「Phone (2a)」でおサイフケータイに対応したときは感心しました。Nothing Technologyは2020年設立のスタートアップ。グローバル規模ではそれほど多くないと考えられる日本ユーザーのために、わざわざ日本独自規格のFeliCaに対応した端末を作るメリットはいかほどか。それでも、その後、25年に発売された「Phone (3a)」や、Nothingの兄弟ブランド「CMF」から出ている「CMF Phone 2 Pro」、そしてフラッグシップの「Phone (3)」、今年早々に発表された初のエントリーモデル「Phone (3a) Lite」でもおサイフケータイ対応を続けてくれています。それは日本でのNothing Phoneの人気の高さ、Nothingが日本を重視していることを示していると言えます。
スマホでもAI活用が注目されていますが、NothingのAIに対する取り組みは積極的かつ洗練されています。当初からChatGPTとの深い連携を実現していましたし、Phone(3a)で登場した「Essential Space(エッセンシャルスペース)」は簡単かつ実用的なAIだと評判です。本体側面に専用のボタンがあり、ワンプッシュでスクリーンショット、長押しすると録音が可能です。これらのデータはエッセンシャルスペースの領域に保存され、AIが内容を読み取り、適切なタイミングでデータに関連した行動をユーザーに提案してくれます。エッセンシャルスペースはワンクリックで自然に使えるAIだと感じます。
Phone (3a)では、Nothing Phoneの弱点とされていたカメラを強化。望遠カメラを加えてトリプルカメラシステムとなりました。画質の評価も上がっています。一方、Phone (3a) Liteは望遠カメラではなく被写体に4センチメートルまで近づけるマクロカメラを含むトリプルカメラとなっています。
Phone (3a)は、楽天モバイルで取り扱われるようになったことも大きなトピックでした。業界におけるチャレンジャー同士、また若い人に人気という面でも相性の良さを感じます。Nothingは基本的にオンライン販売だけでしたが、楽天モバイルのショップで実機を体験・購入できるようになり、日本におけるNothing Phoneの認知拡大に貢献しました。
Phone (3a) Liteも楽天モバイルでの取り扱いがあり、Nothing公式サイトの価格よりも約1万円安い一括3万2890円で販売されています。買いやすい価格なので幅広い人に受け入れられそうです。こちらはレッドが楽天モバイル限定で販売されます。
Nothingは、世界のスマートフォン市場で見るとシェアは1%にも達しませんが、25年には前年比プラス31%もの成長を記録しています(Counterpoint Research調べ)。日本で楽天モバイル以外の大手携帯電話事業者もNothing Phoneを取り扱うことになれば、存在感もより高まっていくでしょう。26年はグローバル、日本ともにさらなる成長が期待され、筆者も非常に注目しています。
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