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Directory first step 5...
ディレクトリ構築において考慮すべきポイント

 すでに説明してきたように,ディレクトリサービスを導入することで,ユーザーにとっては使いやすく,管理者にとっては管理しやすいネットワークを構築できる可能性がある。しかし,肝心のディレクトリサービスを有効に活用できなければ,宝の持ち腐れになってしまう。それでは,ディレクトリおよびディレクトリサービスの構築を成功に導くためには,何が必要となるのだろうか?

 一般的に,ディレクトリおよびディレクトリサービスを構築するまでに必要となる作業は,次のようになる。

Fig.14 現実世界におけるディレクトリ
fig14.gif

sankaku.gif 方針と目標の設定フェーズ

 ディレクトリサービスを構築するうえで最も重要なことは,まず,導入する目的を明確にすることである。そのためには,最初の検討段階で,構築および活用の方針と目標を設定しておく必要がある。そして,プロジェクトを推進するにあたっては,トップダウン的な意思決定能力と,強力な推進力を備えたリーダーシップが必要になる。

 一般にIT(Information Technology)戦略を選択するとき,企業の経営陣は,とかく「ディレクトリサービスを導入しさえすれば,ITは活用され,コストが削減されるのだ」などと過大評価しがちである。だが,ディレクトリサービスに限らず,システムの導入にあたっては,「それを何のためにどのように使用したいのか」という視点であらかじめ十分に検討を重ねておかなければならない。同時に,システムの導入効果に懐疑的なユーザーに対し,導入効果を積極的に提示して指針を示さなければ,システムの導入効果は半減してしまう。また,利用者に対して運用ルールを明確にし,その運用ルールを周知徹底させることも重要となるだろう。

 さらに,この段階で,既存のディレクトリサービスとユーザーアカウントをどう取り扱うかについて,方針を明確にしておく必要もある。おそらく,本稿をお読みの時点でも,ほんどの企業にはいくつかのディレクトリサービスが導入されているはずである。それゆえに,このような既存のディレクトリサービスと新しいディレクトリサービスをどう統合してゆくのか,あるいは統合しないで共存させるのかを決める必要がある。たとえば,新しいディレクトリサービスにすべて置き換える方法もあるだろうし,すでに導入ずみのディレクトリサービスと混在させて利用する方法もあるだろう。もし,新しいディレクトリサービスにすべてを置き換えるのであれば,次のような情報をどのように新しいディレクトリサービスへと統合してゆくのかを十分に検討しておかなければならない。

  • 従来使用していたネットワークログインアカウント(たとえば,Windowsのログオンアカウントなど)
  • SQL ServerやOracleといったデータベースシステムのユーザーアカウント
  • Exchange ServerやNotes/Dominoといった電子メールシステムやグループウェアシステムのユーザーアカウントとアドレス

 結局のところ,ディレクトリサービスを導入することで,ユーザーにとっては使いやすく,管理者にとっては管理しやすいシステムにならなければ,プロジェクトの成功はとうてい望めないのである。闇雲にディレクトリサービスを導入するのではなく,それが本当に必要なのか,あるいはどう活用してゆくつもりなのかを,十分に検討しなければならない。

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