インターネットアプリケーション時代の企業ネットワーク再設計
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アプリケーション形態の変革と物理ネットワークの再設計
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Webベース型アプリケーションは,ホームページの閲覧システムとして登場したWebシステムを基盤として発展してきたアプリケーション形態である。Webベース型アプリケーションでは,アプリケーションがすべてWebサーバー上で動作し,Webサーバーがクライアント/サーバー型アプリケーションや三階層型アプリケーションにおけるクライアントPCに相当する役割を担う。このためWebベース型アプリケーションには,(1)Webサーバー上でアプリケーションを集中管理できる,(2)アプリケーションのアップグレードが容易である,(3)クライアントPCの要件はWebブラウザが動作することだけでありクライアントPCのハードウェアやOSには依存しない,といった利点がある。急速にユーザー数を増やしたNTTドコモのiモードを利用した業務システムも,Webベース型アプリケーションの一形態である。Webベース型アプリケーションは,今後の主流となるアプリケーション形態であると考えられている。
Windowsプラットフォームを基盤とするWebベース型アプリケーションで発生する通信は,(1)クライアントPC(Webブラウザ)とWebサーバーとのあいだで発生するHTTPベースのリクエスト,(2)Webサーバーとアプリケーションサーバーとのあいだで発生するDCOMベースのリクエスト,(3)アプリケーションサーバーとデータベースサーバーとのあいだで発生するSQLベースのリクエスト,などから構成される。
Fig.1-4 Webベース型アプリケーションの通信処理(図版をクリックすると拡大可能)
ところで,Webベース型アプリケーションでは,トランザクションを構成する通信がアプリケーションサーバーとデータベースサーバーとのあいだ(またはWebサーバーとデータベースサーバーとのあいだ)で発生する。すでに述べたが,サーバーPCは同じネットワークに設置されることが多く,トランザクションは三階層型アプリケーションと同様にサーバーPCが属するネットワークの影響のみを受けることになる。
三階層型アプリケーションの場合,トランザクションが終了したあと,クライアントPCで処理結果を受信するため,クライアントPCとアプリケーションサーバーとのあいだでは複数回の通信を要する。これに対してWebベース型アプリケーションの場合は,結果を表示するHTMLページをアプリケーションサーバーが生成し,そのHTMLページを通常のWebサーバーがクライアントPC上で動作するWebブラウザに返す。このため,万一ネットワークの障害などによってWebサーバーからWebブラウザへの通信が失敗した場合でも,単にWebブラウザ上に結果を示すHTMLページが表示されないだけであり,アプリケーション自体の動作には一切影響が及ばない。このことから,Webベース型アプリケーションは,三階層型アプリケーションよりもさらにネットワークの影響を受けにくい形態であるといえる。
一般の業務アプリケーションには,更新結果(処理結果)をあとから再度確認する照会処理が搭載されている。この機能は,主に人間が自分の操作内容を確かめるための仕掛けであるが,通信障害時のリカバーとしても利用される。メインフレームのような一極集中型システムでも,データベースを更新したあとの通信障害は考えられるが,照会処理によってリカバーしてきた経緯がある。つまり,万一通信障害によってWebブラウザに結果を示すHTMLページが正常に表示されなかったとしても,更新内容を照会処理によって確認すればすむ。その意味で,Webベース型アプリケーションとは,メインフレームによるオンライン処理と酷似した側面を持っている。
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