インターネットアプリケーション時代の企業ネットワーク再設計
アプリケーション形態の変革と物理ネットワークの再設計

IPv6と企業ネットワーク

 執筆時点において実装されているTCP/IPは,IPv4(Internet Protocol version 4)であり,IPアドレスは32ビットの整数で表されている。IPv4で接続できるホストの数は,単純には2の32乗であり,その中で使用できないアドレス(ブロードキャストアドレスなど)を除いても,約40億個にも及ぶ。しかし,インターネットの爆発的な普及により,接続されるホストは増え続け,2005年にはIPアドレスが完全に枯渇するとの予想もある。このようなIPアドレスの枯渇問題を抜本的に解消するためにIETF(Internet Engineering Task Force)によって策定されたものが,IPv6(Internet Protocol version 6)である。IPv6は,IPアドレスを128ビットに拡張するなど,IPv4が抱える問題を一掃するものである。今後,ブロードバンドネットワークの普及に伴い,インターネットへと接続する(おそらくすべての)企業にとって,IPv6対応は必須の要件となるだろう。

 では,IPv6はいつ頃,どのような形で企業ネットワークに浸透してゆくのであろうか。執筆時点で考えられるシナリオを簡単に紹介しておこう。

Round-0:デュアルスタック機器の浸透

 IPv4からIPv6へと移行するためには,IPv4とIPv6が混在する期間が必ず存在すると思われる。この混在期を乗り切るためには,「デュアルスタック」という機能を持ったネットワーク機器が必要となる。デュアルスタックとは,IPv4からの通信に対してはIPv4で応答し,IPv6からの通信に対してはIPv6で応答する,というものである。

 IPv6が普及する当初に登場するネットワーク機器は,ほとんどデュアルスタック機能を搭載しているものと思われる。すでに一部のメーカーやベンダーからは,IPv6デュアルスタック機能に対応したネットワーク機器が販売されており,実験的なネットワークも構築されている。2000年10月以降には,さまざまなメーカーやベンダーからIPv6デュアルスタック機能に対応したネットワーク機器が,いっせいに発売されることが予想される。

 Windows 2000,Windos 98などのMicrosoft社製品については,無償でIPv6モジュールが提供される見込みである。

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